PHASE-22【中世よ、これがオーバーテクノロジーだ!】

 ――――流石は俺のゲームデータなだけあって、シートの上に置かれるのは知ってる武器ばかり。


「麻酔銃、使います?」


「ああ、出来るだけ殺めずに解決してみたい。まあ、相手に通用するか分からんが」

 だからなのか、殺傷力のあるハンドガンに、サブマシンガンも用意だ。アサルトライフルまで出てきた。

 サプレッサー装備じゃないんだよね。まあ、見つかったら撃ちまくるスタイルだからな。俺。

 などと思っていたら、俺とは違って、ちゃんとサプレッサーを取り付け始めた。流石は潜入のプロです。

 ハンドガンはCZ75 SP-01。

 サブマシンガンは、サプレッサー組み込み型の、スターリング・パチェット Mk.5(L34A1)。

 アサルトライフルは、MASADA。

 ――……ハハ……、俺って、なんて統一性のないチョイスとセンスなんだろう。

 第三者視点で見ると、それが分かるってもんだ。


「後はC-4にドローン」

 ドローンがあれば偵察も楽になるな。

 でも――――、


「C-4はなんの為に?」

 別段、破壊活動なんて考えていない。人質さえ無事に解放できたら後は逃げるだけ、追いつかれそうならベルが対応してくれれば解決。


「もちろん破壊するためだ」

 やっぱりそうなのか……。


「いやいや、逃げることもですが、敵を倒したというのも考えに入れれば、砦をこちらのものに出来ますよ」

 ――…………俺なんか間違ったこと言ったか? ゲッコーさんがベルを瞥見したのは理解できた。

 視線を受けたベルは、面倒くさそうに嘆息を漏らす……。やめてもらえる、俺がまるで阿呆あつかいされてる気分だよ。


「奪還したとして、誰が守るんだ?」

 なんだよこの問題は? 俺をやはり阿呆あつかいか。


「そんなの簡単だろ。王都から兵を派遣するんだよ」


「ならば、なぜその兵はここには派遣されず、私とお前だけだったんだ?」

 王都を守護するだけで――――、


「手一杯だからか」

 語末だけ口に出す俺。

 そうか……。そうだな。王都で限界なのに、砦にまで兵を派遣する余力は現状ない。

 奪取しても、もぬけの殻なら、再度、魔王軍が侵攻して占領すれば面倒なことになる。

 ならば破壊した方がいいのか。


「理解してくれたな」

 銃をホルスターにしまいつつ、笑みを俺へと向けながら、ワイヤレスタイプのイヤホンマイクを二つ手渡してくれる。

 俺が片耳に取り付ければ、手渡したベルもそれを真似て、髪を耳にかけて取り付けた。

 ぐっときたね! その仕草。

 なんて思っていれば、眼界のゲッコーさんは、バンダナを締め直して気合いを入れると、


「行ってくる――――」

 発すると同時に姿が消える。


「なんだ!? 気配はするが、視界から消えた!?」

 気配は感じる事が出来るんだな。流石はベルだ。俺は何も感じ取れなければ、見えもしないぜ。


「光学迷彩だよ」

 素晴らしきゲーム性能。これによって、この異世界の中世レベルは、ここだけ飛躍的に技術向上した。


「これなら余裕で潜入できますね」


「だから、さっきから言っているが、分からん」

 目には見えないけども、俺の前でしっかりとゲッコーさんの声が聞こえる。


「彼女のように気配を感じ取れる者もいる。油断は出来ない。それに相手は亜人なんだろう。人が持たない野性的な力が発達しているなら、見つかる可能性もある」

 潜入のプロは、チートアイテムを持っていても油断はしない。

 発言を聞いて俺はほっとしている。

 セラからチート能力を俺個人が受け取っていたら、素人がその力にかまけて依存した日には、思慮深く行動できなくなる。

 いくら超絶な力を持っていても、油断から敗北だって考えられるからな。

 任せられる人材に任せるってのが一番だ。

 ――――月夜の中、姿を消したゲッコーさんが峡谷を進んで行く。

 ありがたいことにプレイギアのディスプレイには、ゲッコーさん視点の映像が映し出される。

 ゲッコーさんが主役のゲームはTPSなのに、今はFPSだ。

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