PHASE-07【ファーストコンタクト】
炎を纏えば、エメラルドを思わせる瞳でオークを睨み、眉根を寄せる。
「熱い……」
声が漏れる。炎を纏うベルヴェットから熱が伝わってくる。
警告で地に向けていた切っ先を振り上げ――――、振り下ろす。
「ぷぎぃぃ!?」
一振りで真っ先に詰め寄っていた、俺を襲ったオークが激しく炎に包まれ、断末魔を上げる。が、それは一瞬だった。
瞬時に炭へと姿を変えた。
手にしていた鉈だけが残った。
シュゥゥゥ――っと音を立て、柄は焼け落ち、剣身は真っ赤に染まり、煙を上げている。
「今一度警告する、女性を下ろして去れ」
見たこともない現象だったのか、オーク達は明らかに狼狽していた。
逡巡しながらも、ゆっくりと女性たちを解放し、後退りを数歩おこない、踵を返して逃げ出していった。
「ふん、人の言葉は理解できるようだな」
キンッと小気味のいい金属音をたてて、レイピアが鞘に納まり、装飾が素晴らしい護拳が付属した柄から手が離れると同時に、紅蓮の炎も消滅した。
「皆、無事のようだな」
縛られて、
って、いつまでも倒れ込んでいるわけにはいかないな。
つと立って、俺も女性たちを自由にする。
別段なにもしなかったけど、俺は皆からお礼を言われた。
――俺もお礼を言わないとな。
「こんにちは。そして、ありがとう。助かったよベルヴェット」
初めての挨拶も含めて、笑顔で感謝を述べたのに、再びレイピアが抜かれた……。
切っ先は俺の喉元、数センチ手前だ。
条件反射で諸手を上げて降参のポーズ。
「なぜ私の名を知っている。服装もここの住人とは違うな。何者だ?」
ちょっとまて! 召喚する能力だろ。俺がマスター的な存在じゃないのかよ!?
てっきり絶対服従かと思ったのに。回数限定の絶対命令権タイプなのか?
上げた手の甲に令呪でもあるのかと、確認のために見てみる。無論そんなものはない。
「俺だよ、俺!」
詐欺っぽい発言になってしまったが……。
「貴様など知るか」
ええ……、マジかよ…………。なんて冷めた言い方……。
どうすりゃいいんだよ。
「「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
――――なんだ? 今度は何が起こった。
声の方向に視線を向ければ、逃げ惑う人々。中には鎧を装備した兵士もいる。
我先に、住人と思われる人達を押し倒してまで逃げてる……。兵士、だせぇ……。
「情けない……。腰に下げている利器は飾りか」
ベルヴェットが逃げる兵士を炯眼で睨み、逃げている人達とは逆の方向に駆けだしていく。
「はやっ!」
というか、ぜんぜん俺の指示に従わないんだけど。勝手に動くぞ。
【めいれいさせろ】って選択はないのか?
こんな所に一人でいるのも怖いから、辺りを見回し、消し炭になったオークが手にしていた鉈――――にはもちろん手を伸ばさず、先ほど落とした棒を手にして、ベルヴェットの後を追いかける。
――――城門の近くで佇んでいる赤髪がよく目立つ。
「――はあ、追いついた」
「遅い足だな」
「お前が速いんだよ」
「お前とは生意気な言い様だ。だが、逃げずに挑もうとする心意気は褒めてやる」
「どうも」
俺が手にした棒切れを目にして、戦う気概があると判断したようで、感心している。
というか、主従関係が逆転しているような……。
だがそれ以上に、問題は目の前だ……。
――……来なきゃよかったな……。
開かれた門の外にはオークの群れだ。さっき逃げた奴らが本隊に助けを求めたんだろう。
ざっと見ただけで百以上はいる。
オーク達とは別のもいる。体長が五メートルはありそうな、体毛のない灰色の肌をした力士体格の化け物だ。
ファンタジー作品でよく見るトロールだと思われる。
丸太を簡単に加工した棍棒を肩に担いでこちらに向かってくる。あんなもんで殴られたらミンチになってしまう。
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