此方より

 ぷかり。

 ぷかぷか。

 浮かぶ葦船を橋の端から見遣る。

 見送る。

 看取る。

 水門から流れ出た流体は水流を形成、水面には水紋が繁茂し草の船は煩悶する。

 私はといえば反問せざるを得ず、それはこれがなんなのか、という点に尽きる。

「無論」

 隣の影が嗤う。

「光りとは過去だ」

 私と水面の間にある無限の一瞬が作る過去。

「だから、予知だ」

 ゆらゆら揺れる私らの顔がふらふらと視線を彷徨わせる。

 迷わせている。

「違う」

「違わない」

 証明しない。陰は言う。

 なら。

 私は、橋の上から身を投げた。

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