水滴

 ぴちゃり。

 雨か。

 ぴちゃり。

 否か。

 ぴちゃり。

 尻の下にはぬるぬるとした石。床という風体ではない。鍾乳石である。

 ぴちゃり。

 暗い。

 ぴちゃり。

 であれば、この水滴は天よりの恵みでなく大地の堆積であろう。

「応」

「生きているのか」

 目の前の僧に問う。

 ぴちゃり。

「応とも」

 お前は、と問われる。

 ぴちゃり。

 水一滴毎に痩せ細っていく僧に問われる。

「どうだろうか」

「然うか」

 ぴちゃり。

 ぴちゃり。

 ぴちゃり。

「低いな」

 見上げる。

 ぴちゃり。

 迫り来る。

 ぴちゃり。

 石の層が重なり重なり重なり重なり、次第に次第に迫ってくる。

 ぴちゃり。

「生きているのか」

 誰も生きてはおるまい。積み重なるのは死。時間。

 骸に語りかける。目がない。唇がない。髪がない。

 こつり。

 頭の先に石が刺さる。もう立ち上がることは出来まい。

 横たわり、層の一つになろう。

 ようやく私は入眠した。

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