じっとりとした暗闇の中、まんじりともせず座っている。

 いつからこんな事をしているのか、いつまでこうしているのか、皆目見当もつかない。

 ゆったりとした時間の中、ぎろりと黄色い瞳に覗かれた。

 縦の瞳孔。

 猫であろうか。

 まっくろなそれは眼の中、ぼんやりと座る私を映している。

「何者か」

「やぁ、寒くは無いのかい?」

 聞き覚えの有るような、無いような、曖昧な声。頭蓋の響きが薄紙となって認識に覆いを掛ける。

「猫ならば毛皮もあろう」

「でも君はぬるりと湿っているじゃないか」

 くすりと猫が笑う。

「何が可笑しい」

「何が恐ろしい」

「それは」

「見なよ」

 ふらり。否、と瞳が闇中を向く。

「まるで尾を食む蛇だ」

「違う、私は」

「やっぱり、見た方が早い」

 光りが。闇の中に。暗がりが、明かりに、食われていく。

「これが怖ろしかったのだろう」

 そして私は消失する。

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