第2話 出撃!

8月20日 木曜日 6時00分


陽子からのLINEで目が覚める。


「おはよう。昨日はお疲れ様。私だけカップルになってごめんね。亜矢は私と違って、綺麗だからカップルになれると勝手に思っていた。また行こうね」


勝ち誇ったLINEだ。


「おはよう。陽子誘ってくれて、ありがとうね。カップリングした人とがんばってね。それよりも彼氏どうするのよ?まあ、うまくやってよね」



しまった!所長にありがとうLINEするのを忘れていた!


「所長!おはようございます。昨日はありがとうございました。またご馳走さまです。今度は私が払いますので。今日から婚活がんばります!」


送った直後、


「研究員!おはようございます。こちらこそ楽しかったですよ。婚活もそうですが、まずは今日の仕事、お互いがんばりましょう!」


さすが所長。相手の気遣いができているLINEだ。



8月21日 木曜日 12時00分


今日からお昼時間は、婚活にしよう。

さっさとパンを食べ、スマホで婚活パーティーを調べる。


初めて見たけど、いろんな会社がある。どれにすればいいんだろう。

だまされたりしないかな。1人で行くのは心細い。陽子を誘うのは何か嫌だなあ。


こういう時こそ所長に質問してみよう。


「こんにちは!お昼時すいません。早速婚活パーティーに行こうと思っているのですが、迷っています。どれに行ったらよろしいですか?」


数分後・・・


「こんにちは。早速がんばっていますね!昨日話しをした通り、まず研究員がどのタイプの男性が良いかを考えたほうが良いですよ。例えば趣味が合うとかですが、それはそれで難しいので、まずはデジタルで考えたほうがわかりやすいです。例えば年齢。これはデジタルですね。30歳から40歳までとかね。また年収。これもわかりやすい。あとはバツイチでも良いかどうか。容姿も1から10の10段階として、5ぐらいならOKとか決めていればわかりやすい。あとは、絶対に嫌な条件ですね。例えばタバコは駄目とか、土日休みじゃないと嫌だとかね。そしてその条件に合う婚活パーティーを探せばいいのでは?」



「昼休みの時間、ありがとうございます。考えます!」


「午後からも仕事がんばってね!」


LINEで長文って何か大変申し訳ない気がするが、嬉しいね。


ありがとう、所長!



まずは、デジタルか。

簡単に、会社の人で考えるかな。


同じ部署の男性営業マンの阿部係長で考えてみる。


年齢  37歳

年収  約600万

タバコ 電子タバコを吸う

容姿  10段階中7ぐらい?

性格  7ぐらい?

大学  某有名私大学卒

会話  8 営業だから話はうまい。

休み  私と一緒だから土日は休み。


そういう目で見たことないからわからなかったが、結婚相手としてのスペックとしては高いのでは?

結婚しているし、当たり前のスペックか。


これを踏まえ考えると私が望むスペックはこのくらいかな?

年齢  30歳から30歳後半

年収  500万以上

タバコ 吸わない

容姿  5以上

性格  5以上

大学  大卒以上

会話  7以上

休み  土日休み(時々はOK)


こんな感じかな。やっぱり会話重視だよね。


この条件で、探してみよう!


8月21日 木曜日 21時00分


家に帰り、食事やお風呂をすませ、早速、この条件に当てはまる婚活パーティーを探す。


「男性、年収600万以上かつ公務員または大卒。男性年齢25歳から39歳、女性25歳から35歳」


この婚活パーティーに目が留まる。


申し込んでみようとしたが、値段にびっくり。男性は6000円、女性5000円。


女性って500円とか1000円じゃないの?


まあ、そういうところもあるのか。


しかし、5000円は高いなあと思っていたら

「今なら、婚活塾開催中!受講者は婚活パーティー1回無料。もちろん塾も無料!」

という広告を見つける。


所長ばっかり頼るのもなんだかなあ。今後も含め、この主催者がやっている婚活塾なるものに行ってみるか。さらに1回婚活パーティー無料だしね」


買い物ポイントを必ずもらう私の性格が出た。だからいつも財布がパンパンになる。



8月23日 土曜日 10時00分


私は渋谷にいた。もちろん婚活塾なるものに行くためだ。


建物の6階に行く。

「婚活パーティー 婚サルROOMへようこそ」


早速受け付けに行き、案内された部屋に入る。

受講者9人。私ぐらいの年齢ぐらいが多いかと思っていたが、20代ぐらいが3人、40代ぐらいが5人だった。


「今日は、婚サルROOMの婚活塾にきていただきありがとうございます。早速ですが、今回お話をさせていただく、加藤と申します。今から1時間ですが、お付き合いくださいね。」


加藤さんは、綺麗なお姉さんタイプだね。



「みなさんは、婚活塾にこられたということは、当たり前ですが婚活に興味を持っているということですよね。今もそうですが、出会いは学校だったり、会社だったり、趣味だったりいろいろありますよね。しかし、社会人になると途端に出会いはなくなってしまいます。やはり仕事が忙しいのが理由だと思うのです。よって、我々が出会いのサポートをさせていただきます。」


なるほどね。確かに20代は仕事ばっかりだった。


「みなさんは、婚活パーティーやお見合い相談所のイメージはどうでしょうか?私、今から婚活パーティー行ってくるから!と会社の人に言えますか?言えませんよね。恥ずかしい部分はあると思います。しかし、昔はどうだったでしょう?いわゆる世話焼きおばさんというのが近所にいて、あの人良い人だから1回会って見ない?とかこういう感じだったはずですよ。それが現代になって、さらに釣書という相手のプロフィールがもっとデジタル化したもの、それが弊社であり婚活パーティーなのです。だから恥ずかしがることはないですよ」


確かに、おっしゃることは良くわかる。しかし、恥ずかしい。


「良い人はいっぱいいます。ぜひあなたに合う運命の人とマッチングするようがんばりましょう!」


本当にいっぱいいるのか?


「では、早速。婚活パーティーで1番重要なところは何でしょうか?年収?学歴?もちろん、大切です。しかし、1番重要なのは<第1印象>です!」


見た目のことかな?


「みなさん、婚活パーティーに参加されて、たった数分でこの人のことわかるのか?と思ったことありませんか?」


(心の声)ありまーす!


「しかし、心理学的に言うと、人間の第1印象は、3秒から5秒で決まるそうです。」


(心の大声)え!


「つまり、初めの挨拶、服装、化粧、姿勢、態度、表情などが勝負です。美人とか可愛いとか関係ありません。顔は個性です。みんな違って当たり前!」


なるほどね。確かに私もこの前の婚活パーティーで、見た目のみで、この人こまったちゃんとか思ったから。


「では、まず服装からやっていきましょうね!」


加藤さんのことをまとめる次のようだった。


・挨拶ははっきりと!こちらから先に言いましょう!

・服装は普段着以上ドレス未満。華美ではなさすぎないように。

・化粧は厚くならないように。

・ネイルは男性が見るポイントです。指先までオシャレしていると思うので、バッ チリと!

・姿勢は背筋を伸ばして、必ず相手のほうを向く。

・態度は、基本的にすべてを受け入れること。例えばタバコを吸うのですがよろし いですか?と聞かれたら、嫌でも大丈夫といいましょう。後で辞めてしまうよう に差し向ければいいわけですから。

・いつも笑顔で!



なるほど!なんとなくわかった。というより、加藤さんの圧力がすごく、何もしていないのに、自信が溢れ出てくる!


そして、挨拶の仕方と笑顔の仕方、などを習って終了。



「以上で、塾は終わりです。何も質問がなければ、簡単にアンケートを書いてもらいます。そして、今からチケットをお渡しします。条件さえ当てはまれば、どの値段のパーティーでも無料です。がんばって運命の人をゲットしてくださいね!」


うん!絶対運命の人を見つけるよ!



8月23日 土曜日 17時00分


渋谷をぶらぶらしていたら、結構時間かかったね。

早速、先ほどのチケットを使用し、予約。



「男性、年収600万以上かつ公務員または大卒。男性年齢25歳から39歳、女性25歳から35歳」


本当だったら、5000円だよ。


ここで運命の人を見つけるのだ!

早速、所長にLINEをする。


「こんにちは。今日、婚サルROOMという婚活パーティーの塾に行ってきました。そこでいろいろ勉強してきました。前回のようにならないように、今度の水曜日にパーティー行ってきます!」


すぐに既読が付く。


「どういう内容かな?」


「これに行きます」


そうして、婚サルROOMのURLを貼り付けた。


「研究員、良くやったね!僕は今からこの前のパーティーでカップリングした女性と食事に行ってきます。僕もがんばるからね!」


そうだった。今日は所長の日だ。


「運命の人だったらいいですね!がんばってください」


いいなあ、所長は。私は今から家でゴロゴロ。明日もゴロゴロ。何かこういう話を聞くと、海外ドラマを見るのもねえ。寂しくなってきたなあ。


と思いつつ、帰ってからタブレットの再生ボタンを押した。



8月27日 水曜日 19時00分


仕事が終わって、渋谷に直行。早速、婚サルROOM渋谷に向かう。


受付にてチケットと身分証明書を提示し、1番の番号札と自己PRカードをもらう。

今回は、予習はバッチリ。すらすら記入する。


「みなさん、お集まりですね。今日はお忙しい中、婚サルROOMにご参加いただきありがとうございます。今日は、男性8名、女性10名参加いただきありがとうございます。」


今日は女性が多いね。


「今回のパーティーの流れをご案内させていただきます。まず、1人あたり5分お話をしていただきます。今回女性の方が多いので、女性は2回ほど空いている時間がございますが、ご了承ください。1度すべての人とお話した後、第1印象カードに1位から3位までの異性の番号を書いてください。集計が終わり結果をお渡しします。その後もう一度全員の方をお話させていただきます。最後にカップリングカードも1位から3位までの異性の番号を書いてください。その結果でカップリングになります。本日も多数のカップルが誕生することを願っております。」


なるほどね。今日は、この前みたいに1人ぼっちにならなくて良いシステムだね。


「では、同じ番号の方とお話してください。いない番号の女性は少々お待ちください。」


「こんばんは!」

私は、塾で習ったように満面な笑顔で挨拶をした。


「こんばんは・・・」

1番の男性は引いた感じに見えた。


やりすぎたかなと思ったが、5分という安心感と所長に教えてもらったように相手の自己PRカードの見ずにお話をした。


しかし、会話をする5分なんてあっという間。


次の人にタッチ。


こういう感じで8番まで終了。女性が2人多いので、最後の10分は休憩。


今回はうまくいったね。相手の人にも質問も返せたし、自分も質問できたしね。

私が1番だと思ったのはやっぱり7番さんだね。高身長で笑顔が素敵で話も上手だったし。やっぱり営業やっている人は話がうまいよね。5分という限られた時間だったけど笑わせてくれたしね。あとは、2番さんか3番さんかな?


「では、第1印象カードをご提出お願いします。」


考えているうちに10分たってしまった。


1、7番  2、2番 3、3番

と紙に書いて提出。


「今から10分の休憩をとります。集計が終わり次第、第1印象カードの結果をお配りします。」


数分後、私に第1印象カードの結果がくる。

この瞬間って、高校や大学の受験の発表ぐらいドキドキする。


思い切ってあける!

1番に推してくれた男性  ゼロ

2番に推してくれた男性  ゼロ

3番に推してくれた男性  4番のみ


またもや惨敗。せめて、3番目ぐらい誰か私が入れた人ぐらい、いないの!

4番なんて、話ができない39歳のデブなオッサン!


「みなさん、休憩からお帰りですか?揃っておられますね。では、最後にもう1周してもらいます。ではスタートお願いします」


今気づいた!


この1周も地獄だ。誰からも気に入られてない私なんか、そもそも話しをしようとも思わないだろう。私も7番、2番,3番以外話す必要がない。いや選ばれていない時点で、誰も話す必要がないのでは?


「こんにちは」


1番も心なしか声が小さい。お互い第1印象に入れてないせいか、沈黙になる。関係ない話をして、時間が過ぎる。


2番と3番と7番は、入れてくれてありがとうと言われる。あなたは私に投票していないでしょう?皮肉の愛想笑いしかできない。4番に限っては、最後はあなたに入れるから、入れてくれない?とも言われる。なら3位ではなく、1位で投票しろよ!


結局、私はダメもとで、1位に7番を投票し、2位3位は記入しなかった。


「今日は3組のカップルが誕生しました!」


「男性2番さん、女性4番さん。男性3番さん、女性2番さん、男性7番さん、女性5番さん、以上です。拍手をお願いします」


もちろん、私の番号はない。やはり2番、3番、7番。


「では、カップリングした方は、会場を5分ほど開放します。よって、この会場にお残りいただき、連絡先交換をしてください。それ以外の方は、女性からご退出ください。」


私はまたカップリング出来なかった。


ふとレストランで働いていたことを思いだした。同じキャベツなのに、芯が大きもの、同じお肉なのに、脂肪が多いもの。同じトンカツなのに、衣の部分。すべて同じ食べ物なのに残す人多数。もったいないなあと思いながらも食材廃棄用のバケツに入れていた。


今の私もそうだ。

同じ人間、同じ女性、同じ条件の年代。


何も違わないはず・・・


なんか自分が残った食材に思えた。


選ばれなかった自分。


よって、私は婚サルROOMの会場からエレベーターを使い、外に出るまでを廃棄所への道と名づけた。


エレベーターから、廃棄所への道で外に出た瞬間、カップルになっていない女性はみんなダッシュであらゆる方向に散って行った。私は見届けていたが数秒後には誰かどこに行ったかわからなかった。その気持ちはわかる。


ここから、逃げたい。


恥ずかしいよりも屈辱的だからだ。



やっぱり私は不幸だ。



不必要な人間で、廃棄所行きだ。


私もダッシュで逃げたい。


今回は、所長にもいろいろ教えてもらったし、塾にも行った。笑顔や自己PRの勉強もした。それでも選ばれなかった。カップリング出来なくても、私に投票してくれる人がもう少しくらいいても。


また自己嫌悪。

もう最悪。



帰りの電車の時間を調べるため、スマホの電源を入れる。



8月27日 水曜日 21時03分


電源を入れるとLINEの通知。


「終わった?近くにいるから、ごはんでも行こうか?」


所長だった。


終わった?とはなんだ?


「なんで私がカップルになれなかってわかったのですか!」


怒りがこみ上げてきて、ものすごいスピードで返信した。


「失礼だったね。ごめんごめん。ただ、悲しんでいるかと思ってね」


なんで、所長はわかるのだろう?もしかしてストーキングされているのか?


「今、ストーカーとか思ったでしょ?」


すぐに返事がくる。

この人、何者だ!

私は今悲しんでいて不安定なの!

文句を言ってやる!


「じゃあ、どこに行けば!」


「ここに来て、着いたら連絡ちょうだい」

と、居酒屋のURLがきた。


数分後・・・


「所長、着いた」


とLINEをすると、所長登場。


「思ったより元気そうだね。こっちの部屋だよ」


と言って個室に案内される。


「本当に何で?私がわかるの?」


店員がいるのに、叫んでしまった。


「まあまあ、落ち着いて。とりあえず飲み物注文しようよ。」


レッドアイを注文し、机に置かれた瞬間飲み干す。


「落ち着いたかな?まあ正直いって心配だから、渋谷で待っていた。」


「じゃあ、カップルになれないこともわかっていた?」


「99%無理だと思った」


「どうせ私は不幸!所長と違って誰からも必要とされない人間なので、すいませんね!」


なぜか涙が出た。


「泣くほど悔しかったのだね。じゃあ、無理だと思った理由を教えよう。」


「もういいです!私は諦めるから。上から目線で言われても!うまくいっている人間から教えられることは何も無い、同情もいらない!」


「言い方が悪かった。ごめん。じゃあ何であの時、僕に声をかけた?」


黙ってしまった。


確かにそうだ。


私が、声をかけたし、教えてと言ったから所長は責任を感じていたのだ。

今日も失敗すると思って心配だったのだろう。

だから、ここにいるのだ。


「結構恥ずかしいね。女性を待つっているってね。」


食べかけの刺身もあった。所長は私を待っていたのだ。


「もう一杯、レッドアイを」


私は、小さな人間だ。嫌なことから逃げ出し、それを人に当たる。それもまだ1回しか会ったことない人に。それも私がお願いしている人なのに。


レッドアイが届く。もちろん飲み干す。


「冷静になれた?じゃあ、所長として続きの話をしても良いかい?」


黙ってうなずく。


「まず、今日の婚サルROOMの条件覚えている?」


「男性、年収600万以上かつ公務員または大卒。男性年齢25歳から39歳、女性25歳から35歳ですよね。」


「そうだね。それより、会費は?」


「男性6000円、女性5000円」


「何か不思議に思わなかった?」


「女性が高いと思いました。」


「そうだよね。これは女性よりも男性の方が高条件だから。女性のほうが人数多かったでしょう?」


「そうです」


「この前、自分の理想の人の最低条件を決めてといったよね。それも教えてくれる?」


私が決めた条件を伝える。


年齢  30歳から30歳後半

年収  500万以上

タバコ 吸わない

容姿  5以上

性格  5以上

大学  大卒以上

会話  7以上

休み  土日祝休み(時々はOK)


「研究員が望む人は10人いたら何人いると思う?」


「5人くらいはいるのでは?」


「なるほどね。普通と思っているから5人と答えたのだよね。しかし婚活で良く言われる普通の人っていない。特に数字に置き換えるとわかりやすいから」


私は意味がわからなかった。普通の人だから半分なのに。


「まず、年齢。30歳から30歳後半で未婚の人って30代の中で何%だろうね?」


そんなこと考えたことなかった。


「一般的に30代前半で50%以下。30歳後半で35%以下といわれる」


確かにそんな感じはする。


「ここから、おおよそだけど、研究員の希望とする男性の条件を考えてみる」


所長がいうのはこういうことだ。


年齢  30代の中で約40%(平均すると)

年収  30代の500万以上は約30%(既婚者などを含む)

タバコ 吸わない人は、約70%

容姿  50%(10段階から)

性格  50%(10段階から)

大卒  約40%

会話  30%(10段階から逆算)

休み  約40% (土日休みの人)


「確率で考える。つまりすべて掛け算をする。それで計算すると、約0.1%ということになる。もちろん、計算的におかしい部分はあるから、あくまで目安。」


「私に合う人は、1000人に1人なのでしょうか」


「そうだね。だから運命の人かもね」


「これと今日のカップリングになれないとは何か関係があるのでしょうか?」


「そうだね。今日の人は1000人に1人の人はいたかな?」


「たぶん、2番、3番、7番と3人はいたかと思います。」


「つまり、8人中3人はいた。それは確率高い!だから女性が集まりやすい。市場原理から言うと、女性の値段を安くしなくてもいいってこと。だから高い」


所長のいうことをまとめると、


・今回は男性のスペックが高いため、女性に人気で人数も多い。つまり、女性が選 ぶのではなく、男性が選ぶ立場なので普通の婚活パーティーより男性優位であ る。

・一般的に高スペックの男性が女性に対して求めるものは、女性らしさと若さ。

・女性らしさというのは、母親らしさ。つまり結婚と子供を産むことがイコールに なり、そのことを前提にしているので、男性は料理ができるなどの家庭的な女性 を選ぶ傾向にある。

・若さとはもちろん年齢。若いほど良い。


確かに、今日来た女性はみんな若かったような気がする。さらに、服装も大人の服装ではなく、どちらかというと可愛い系だった。


「25歳から35歳と書いてあったから選んだのでしょ?32歳だから当てはまるからではない。失礼な言い方だけど、可愛くない25歳と綺麗な32歳、どちらを選ぶ?このスペックだとほぼ25歳。また、男性が求めているように、家庭的なことをアピールするかが課題になるのだよ。」


そうか、私みたいに趣味はヨガと海外ドラマなどを書くと、いかにも暇そうで自己中な女だと思われる。また仕事もバリバリがんばっていますアピールもしたが、男性もある程度収入もあるから、子供を産んで家庭に入ってほしいので、女性に仕事を求めていない。アピールがすべてマイナスだったのだ。


「わかったかい?」


「さすが所長です・・・」


「じゃあさ、あの場ではどうやってアピールすれば良かったのかな?」


「そうですね。年齢では勝てないから、私は料理も掃除も完璧です。尽くすことが大好き!良く癒されると言われますなど、おっとりしとけばよかった。」


「まあ、そういうこと。逆に、研究員はそうできるかい?」


「たぶん、無理です。本性すぐにバレてしまいますね!」


「会って2回目の上司に、怒って、涙流して、ストーカー扱いする性格だからね。良かったじゃないか、今日カップリングしなくてね」


「いろいろ余計ですよ」


なんか安心して笑いながら涙が出てきた。


レッドアイを飲み干す。



「そういえば、所長、この前の土曜日はうまくいきましたか?」


「まあね」


「どんな感じになるのですか?」


「まあね。ぼちぼちです。」


「何で教えてくれないのですか!」


「僕のことはいいの。そうだね、まだ付き合っていないけど同時進行している人は3人いるということで良いかな?」


「3人も?所長ってモテモテ!私はゼロですよ!1人ください!」


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