(二人の出会い)おまけその1

※ここに出てくる“リナリア・シュヴァルツリッター”は、ブレイバ一人乗りです。その為、霊力不足で障壁が使えません。

 それを踏まえた上でご覧ください。


 サナートから南に10km程離れた街にて。

 一台の護送用自動車防弾リムジンが、10機のエリダーナに襲撃されていた。

「姫様、お逃げください……ぐわあっ!」

 自動車に向けるにはあまりに巨大な携行砲が火を噴き、車体を横転させた。

「大丈夫ですか!? ……くっ、申し訳ございません……!」

 銀髪の美少女が、運転手の亡骸を見て俯く。

 と、不快な金属音が響いた。

「ひっ……!?」

 隙間から覗き見ると、エリダーナの無骨なマニピュレータが、護送車をこじ開けようとしていた。

「い……嫌! 貴方達の手にかかるなんて……!」

 必死に叫ぶが、エリダーナの動きは止まらない。

 やがて屋根を外され、腕が美少女に伸び始めた。

「これで、後はこいつを連れて行くだけだ」

 不気味な声が、エリダーナから響いた。

「この声質はアルゴル(環形動物群型生物)……! いや、助けて……! お母さま……!」

 美少女が祈るが、エリダーナは無情にも美少女を掴もうとし――

「何ッ、増援だと!? 1機か!?」


 その瞬間、腕を伸ばしていたエリダーナは両断され、爆ぜ散った。


「何だこいつ……ぐわぁああああッ!」

「!?」

 彼女にとっての奇跡が、起こったのであった。


     *


「あれか……! くっ、誰でもいいから無事でいてくれ……!」

 狐の耳と毛皮を持つ獣人の男が、コクピットのモニター越しに黒煙を見ていた。

「あそこに、僕が仕えるべきお方が……! 今、参ります……!」

 男は浮かび上がったパネルを操作し、速度を上昇させる。



 リナリア・シュヴァルツリッター――本来は皇帝専用機である機体“リナリア”をベースに造られたワンオフモデルの機体――が、背中から霊力を噴射させて黒煙の上がる場所へと向かっていた。



「くっ、あのエリダーナ……! 何してやがる……!」

 男はリナリア・シュヴァルツリッターに剣を構えさせ、そのままの速度で突っ込む。

「救出活動の障害を排除する……! 戦闘開始!」

 速度を緩めないまま、大剣を振るうリナリア・シュヴァルツリッター。

「はああっ!」

 目にも止まらぬ速度で振るわれた大剣は、一撃でエリダーナを両断した。

「1機目!」

 勢いよく通り過ぎたのをUターンし、再びエリダーナ達へと吶喊する。

「先手必勝……!」

 剣と盾を正面に構える、リナリア・シュヴァルツリッター。

 剣の基部と盾の先端のそれぞれに備えられていた宝石から、霊力の弾丸が嵐となってエリダーナ2機を呑んだ。

「ぐあっ、ダメか……!」

「たかが1機に……! 後は、任せたぞ……!」


「3機目!」

 再び勢いよく通り抜け、Uターンして態勢を整える。

「恐れるな、相手は1機だ!」

「撃て、撃て!」

 各々が携行しているサブマシンガン、実弾ライフル、ビームライフルを一斉に撃ち始める。

「残念だったね。その程度じゃ、貫けない」

 だがリナリア・シュヴァルツリッターは、ひし形に近い形状の盾に霊力を纏わせ、全ての攻撃を無効化した。

「どけ……! 僕はこの機体で、父さんとの約束を守る……!」

 斬撃、盾での刺突、蹴り上げを同時に行うリナリア・シュヴァルツリッター。

 そのまま盾の先端から霊力を連射し、更に大剣の基部からのビームを蹴飛ばしたエリダーナに連射して、3機同時に爆散させた。

「6機目!」

 撃破を確認した男は、霊力の噴射を中断し、機体を着地させた。


「くそっ、このままじゃやられる!」

「いや、4機同時に仕掛ければ……!」

「近づけば、あの機動力も無意味だ! 格闘で叩く!」

 エリダーナにいるアルゴル達が、レーザー通信でやり取りする。

 そして、同時に光剣を抜いてきた。

「行くぞ……!」

 地面を走りながら、一斉に仕掛けようとする。



 しかし、男は不敵に笑っていた。

「いいね。けど、父さんならこのくらいは簡単なはずだ」

 迫る4機のエリダーナを笑顔で睨みつつ、叫んだ。

「『盾よ、剣と成りて我が敵を刻めシルト・シュヴェーアト』ッ!」



 男が何かを唱えると、リナリア・シュヴァルツリッターの左手にある盾が形状を変え始めた。

「何だ、あれは……!?」

「怯むな! 進め!」

 アルゴル達は恐怖心を振り払い、剣を構えた腕を振り上げる。

「遅かったね」

 だがリナリア・シュヴァルツリッターは、既にとなっていた。

「さよならだ!」

 交差させた腕を元に戻す要領で、迫るエリダーナの内3機を三等分した。

「9機目! さあ、残すはキミだけだ」

「ひいっ……! ば、化け物だぁ……っ!」

 残ったエリダーナが武器を全て捨て、全速力で走り去ろうとする。

「逃がさないよ」

 だがリナリア・シュヴァルツリッターは、テレポートでエリダーナの正面に回り込む。

「終わりだ」

 そして双剣をX字状に振り下ろし、最後の1機を撃墜した。

「うぎゃぁああああああっ!」

 アルゴルが断末魔を上げると同時に、機体が爆散する。

「さて。生き残ったおかたを助けなくては」

 そして、大破した護送車の前に機体を立たせると、ゆっくりと地面に降りた。


     *


「お怪我はありませんか――」

 左膝を立たせて跪いた男は、護送車にいた生存者を見て驚愕した。

「皇女殿下」

 途切れた声を強引に繋げ、残されていた人物を見据えた。

「貴方は――」

 護送車にいた美少女も、男を知っていたようであった。

「お母さまの恩人の、ご子息なのですか?」

「ええ。ブレイバと申します、殿下」

 こうして男――後にブレイバ・クロイツと名乗る狐の獣人――は、美少女――ブランシュ・アルマ・ウェーバーと呼ばれる、現アルマ帝国皇帝の娘――と運命の出会いを果たしたのであった。



作者からの追伸


 有原です。

 リナリア・シュヴァルツリッターを活躍させない手はないと考え、一話追加いたしました。


 さて。

 鋼鉄人形、リナリア改並びにリナリアへ告げます。

 このの機体に、挑んでください。



 ええ。あなた方に喧嘩を売らせていただきました。

 帝国最強はあなた方ではありません(ただしアルマガルムは規格外なので除外。ここでは鋼鉄人形についてのみ言及)。この“リナリア・シュヴァルツリッター”です。



 ですので、容赦なく挑んできてくださいませ。クフフハハハハハハ……!


 ちなみに、可変式大盾のもう一つの形状変化は、『剣よ、盾と成りて我が身を護れシュヴェーアト・シルト』と言います。


 さて。イフの物語の一部ではございますが、お楽しみいただけたでしょうか?

 それでは、これで失礼いたし――


(謎の電波ジャック)


ブレイバ

「これが僕達の出会いとはね」


ブランシュ

「白馬の王子様の代わりに、漆黒の騎士様が来てくださった……それだけで、貴方に惚れてしまいましたわ。騎士様」


ブレイバ

「そうだったね、姫様。まあ、僕は当然の事をしただけなんだけど」


ブランシュ

「しかし、これを読んだら少々、貴方の事が――」


ブレイバ

「欲しくなったの?」


ブランシュ

「はい……」


ブレイバ

「それじゃ、この場で一回――」


リナリア・シュヴァルツリッター

「待て待て待て待て、待って! どうして野外でしようとするのさ、せめて私のコクピットに乗って!」


ブレイバ

「わかった、そうするよ。野外はしばらく出来ないね、姫様」


ブランシュ

「はい、騎士様」


リナリア・シュヴァルツリッター

「どうしてこう、いつも野外を希望するのさお二方! もう……。そうだ、皆様。ここまでお読みくださり、ありがとうございました(って、何故か勝手に喧嘩を挑んだ事になってます!? ねえ!?)」


(電波ジャック終了)


 おっ、復帰いたしましたね?

 では、今回はここまで!

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