凍る月



君のやたらまっすぐな首、が


すこしぎざぎざした、耳が


黒く滑らかな髪が


ぼくの上に、覆いかぶさって


かちり、




君の白い歯が音を立てる。




ぼくの背筋に、ぞくりと、冷たいものが走って。






ぼくは君の視線に晒されるだけで



ひどくアンバランスな、



あやうい



焦燥的な



感覚を



手に入れられるんだけど


同時にそれを、


失うおそれ、みたいなものに



脳みそをからめとられてしまう。



時々考えるんだよ



窓の外の月がぼくらの上に落ちてきたら、



今、落ちてきたら



どんな気持ちかなって。



月の冷たい肌と、



ぼくの熱い熱に



プレスされる君の



顔を見ながら



最後に果てたいなって



そういうことを口にするぼくを



君はすごく残酷な笑みで見つめるんだけれど



君にとっておそらく



ぼくのかんがえることなど



少しも興味はないのだろう



ぼくだって、意味などないと



知ってはいるのだけど。



だけど―――――――




「愛してるから触らせて」



「いや」





嫌、厭、いや、否待って



魔法みたいで、


しびれるような


君の肌のうえの


その薄いヴェールを


ぼくはいますぐ剥ぎ取ってしまいたくて


壊してしまいたくて、




乱暴に掴んだその腕の


あまりの細さに


たじろいでしまったりして






「月が堕ちてくる」



君が言うのでぼくは



空からあれを、まあるいあれを



叩き落しておしまいにした。





ごめんね、あんまり好きだから


凍りつかせて、おしまいにした。









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