nameless
地球上のいつか
どこかで暮らしていた
名前のない
ある男
の頭の中に
かつて一度も存在しなかった
すべてのもの
を煮詰めたスープ
に浮かんで
いた
一片のウミガメ
の七番目のヒレ
の網目の中の点
誰かがスープに息を吹きかけて
表面が波立った
ヒレが沈んでいく。
かつてある男の頭の中に一度たりとも存在しなかったものを集めたスープ
鍋の底にはありとあらゆる かつて男の頭の中に存在しなかったもの
たちがひしめき合ってうごめいてい た。
部屋の明かりが遠ざかっていく。
ウミガメの七番目のヒレは
(例えば存在しなかった幸運や不運)
ゆっくりと異形のものに埋もれてゆく。
かつて世界中のどの神話にも描かれたことのなかった名前のない魔物
がゆっくりと歩み寄り、スープに口をつけ飲み干してしまった。
魔物の真っ暗な胃袋の中
かつて男の頭の中に存在しなかったありとあらゆるもの
を煮詰めたスープ
かつて世界中のどの神話にも描かれたことのなかった名前のない魔物
は宇宙のどこにも存在しない点を結んだ空間の中で
大きく息をついて
眠っ
た
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます