第4話 神酒
「酒好きか、自信家か…どっちかだな?」
機嫌が良いのか、笑みを浮かべてそこへ腰掛ける。
そして手招きをしてくる。
噂に聞いた辺りだと、かなり飲めるらしいから、量はあるが…。
気をたっぷり込めたこの神酒を飲んですんなり酔ってくれれば、手の内に出来る。
神でも、手なずけることは出来る。
「これだ」
酒を出せば、ひょいっと取って匂いを嗅いだ。
「ふぅん……こりゃまたキツそうだ」
さっきまでの喋りは何処へやら、そう呟く。
そして、一口飲んだ。
ピリ、と空気が変わる。
舌で味を転がして、確かめているのがわかる。
「どうだ?」
「悪くない…かな」
と言いつつ、今度は一気にその酒を飲み干した。
味わうのはたった一口だけ、か。
水でも飲むかのような自然なノリで一気飲みしたその手は、足りないとでも言うかのようにクイと寄越せを示す。
噂通りの飲み干しだ。
用意していた酒を全部差し出す。
それに、ニヤッと口角を上げた。
「素人のクセに中々の酒作るじゃない」
「素人だと…わかるのか」
「玄人なら、もうちっと気も美味い。ま、酒だけでもかなーり美味しいんだけどね。これはちっと雑だ。取り敢えずたっぷりこれでもかってくらい込めただけ。酒だけ取っても素人にしちゃ上出来だし、磨けばいいのに」
「気を込めればいいってもんじゃないってことか?」
「あんたの目的には沿ってていいんじゃない?陽の神には一口さえ飲めないキツさだ。陰でも酔うね」
これは…酒好きタイプだな。
自信家ならここまで言わないだろう。
もう既に、用意していた酒の半分は飲み干している。
飲むスピードは一定を保ち、それでも速い。
陰でも酔う、と言っておきながら、その説得力を見せる様子はなしだな。
あと、目的もバレてたか。
それでも飲むのなら相当だろう。
「ただ、薄味だねぇ……。気が薄い。あんた、陽は強いくせに生まれつき気が薄いんだね。勿体ない。量だけ入れてカバーする理由もわかるわ。適量だと、味ないもん。」
「は?」
「だからさ、これくらい気を入れてるから陰も酔えるってこと。もっと入れないと、下級の陰しか酔わないよ」
「もっと!?」
「あは、もしかして、これが限界だった?じゃ、酔わすのは夢のまた夢かなぁ」
クックックと喉で笑うと、最後の酒を飲み干した。
なるほど、これだけ飲んでも酔わないしまったく手を止めないのはそういうことか。
これ以上は俺だけの気じゃ酔わせられない。
協力者が必要か…。
「出直しておいで。あと、どんなに気が濃くなっても…この程度の量じゃ、話にならないから」
壁が増えた気がする……。
これでもかなりの量だったが、予想を遥か上回った。
噂以上の酒飲みじゃないのか?
それに、酒を飲んでから陰が元に戻ったみたいだ。
去ってしまった神を目で探しながら声をかける。
「帰るぞ」
「酒もダメなのか?」
「いや、この酒じゃ足りなかったらしい。取り敢えず、
「飲んでくれるか?」
「好都合なことに、酒好きのようだ。気付いても断りはしないだろう」
二人で来た道を戻る。
必ずや、あの神を手懐け、陰を抑えさせる。
変える為に。
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