正夢
カランカランとベットが隣を通過する。熱があった私でも分かるような。
あまりにも周りが静かで、その音が嫌味なほど私の耳へ直接入ってくる。
次にあのベットで眠っているのは私なのだろうか......。
そんなことも考えながら、そっと部屋からでて薄暗闇のしいんとした廊下へ出た。
そしてそれは、私の目の前を無慈悲にすっと通り過ぎて行った。
しかし私はそのベットに眠っている人を見逃さなかった。
いや、目に焼き付くほどのすさまじい衝撃だった。
そこには、あの夢で出てきた彼。
松山君の姿が、そこにはあった。
そんな夢のことを考えているうちにもそれは離れていき、愕然と立っているうちに透けるようにして消えていった。
頭が痛くなり、また状況が掴めないままでいる。
どういうことだ?これは夢ではないだろう......と頬を引っ叩いたりするが、そこで現れたのは静寂と悲。
その後すぐに、ベットにいる小雪ちゃんにいたことを告げた。
その夢は私しか知らなかったから彼女はまるで冗談を見つけた目で少し心配そうに話しかけた。
「さすがにそれはないでしょ......。見間違えじゃない?」
そんなことも言っていた。しかしまたゆっくりその夢のことを話して今起きたことも、もう一度声に出した。
そしてなんとか分かってくれたようで、彼女はこう声を漏らした
「嘘でしょ......。彼、本当にしてしまったの?あのことを......」
とりあえず理解はしてくれた。そうと分かれば彼の後を追う。
あのことって何?と聞き返そうとしたが今、そんな余裕は私にはなかった。
2人で彼の後を追う。バタバタバタバタと何もない平面な廊下に足音が響く。
周りはすっかり寝静まり、風ときらきらの月が私たちを見ているだけ......。
急いで追いつくようにした私たちは全力で走り、やっとのことで前に影が見えた。
大きな窓を越えた先の、曲がり角を曲がると地下へ繋がるエレベーターがある。
医療用や救急用に使われており、患者やお見舞いに来た人々は普段使えないようになっている。
角を曲がり少しスピードを緩めながら近づけていくと、エレベーターの下矢印を指す橙がくっきりと見えた。そこには何人かの医者と看護師。いたって平然としていた。
そして最後に、何も考えないエレベーターは、ドアを重く開けその移動式ベットを医者ごとスッと吸い込んでいった。
ドアが閉まろうとするのを見て、今しかないと思った私は
「松山君!!!!!」
と叫びながら、そこへ勢いよく走ってたが時すでに遅し。
ドアは私が近づいてきたと同時に閉まり、看護師もそのことには気づいていなかった......。
そおしてそのエレベーターが指していた階数は地下一階。
私たちはそれを見て「死んだこと」を察し、小雪ちゃんとその場で倒れるようにして絶望した。
「............霊安室だね」
「...........」
私が静かに言葉を投げ捨てると彼女はうつむいたまま、透き通った、自然な涙をつらつらと流した。
そして数分後にあることを思い出した。
それは彼女が言った言葉だ。
「......小雪ちゃん、あのことって何?」
そう私が問いかけたのは、すっかり夜も明け、自分の中でまた、新しい一日が始まる頃だった。
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