眠る顔に蒼い涙が

眠る顔に涙が零れる。


止まらないその美しい涙。


輝かしいその色。


ころりころり。さら....さらさらさら。


とうとう、このことを書かないといけないのか......。もう思い出したくもないが、あの暖かい声をした人のことを。


思い出したくない。とは言ってはならないな。


このことも、その人が生きた証なのだ。辛くも現実を受け止めるのだ。


その力がないと、先の短い私でもやっていけないぞ。 死んだ後もどうなるか分からないのだから。

 

 しっかりと書きます。この日記に、私達の存在を肯定してもらうためにー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それは、雨が黒色に染まるかのような濃く暗い空。星は一つもなくて、地に閉じ込められたようだった。


そしてその日。ベットから起き上がり、トイレに行こうとしていた時


ナースステーションから、こんな声が聞こえた。


「決まったようなものだ......。残念です。まだとても若いのに、急すぎて」


どうやら、この病院で若い子が亡くなったんだって。

ここの病院の入院患者は若年層の人が多くて、可哀想だと思ったけど私はそこまで深く思わなかった。


恐怖を少し感じた程度のみで。


私もどうせこうなるのだ。若くして死に、色々な人からそう言われて、惜しまれるのだろう。


惜しまれたところで、私の寿命が伸びるわけでもないからどうなったっていい。

死ぬとわかっていたのならば、なにか私に色々なことをしてくれたのなら、少しは惜しまずに済むだろう。


どうせそれはただの「言葉」なんだ。

他人には自分のことなんて分からない。



トイレを済ませて私はベットへと戻ろうとした矢先。

帰りの道先の、ある病室にだけ光がついていた。

なにごとかと思い、私はその光に近づく。


薄暗い道、怖くなったけど。


なにか新しい経験が待っていそうで好奇心に駆られていた。



コツコツ。コツコツコツ。

ゆっくり周りを気にしながら歩き、そこにある大きな窓も気にして。


どこかで見たことのある場所だ。

ドアから病室を覗く......。


しかし、そこにあったのは経験とかいう楽しいものではなく、絶望と驚愕。

私も一緒に消えたいと思うほどの。





「21:49患者の死亡を確認 死因:心破裂 」



「遺体を安置所へ運び、直ぐに遺族を...」



閑散とした、ただ冷たい風が通り過ぎる病室に、医師の声が響く。


医師と看護師がその部屋を出ると、そこには、最期を見に来た人もなしに、ただ、私が立っているだけだった。


私は、その力のない顔をみて蒼い涙をそこに零した。

零して間もなく、空白の時が流れる。


そしてただ、そこにある名札。



それが1番私にとって見苦しいことであった。










「松山蒼太 15歳」

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