孤独になりそうな日

病院の中での高校生活が、夏に差し掛かろうとするとき。

小雪こゆきちゃん、松山まつやまくんともすっかり仲良くなった。


彼はあと5日程度で退院となる。今度こそは、本当に退院できるらしい。

軽い骨折にしては、長かったような。


「今まで、ありがとう! 二人と一緒に喋れて俺、楽しかった」


まだ5日もあるのに、まるで今日が最後のように彼は話した。


「まだ、5日も残ってるよ。 そういうのは最後の最後のほうがいいんじゃない?」


みんながみんな、笑って終わろうとしたのだろう。

だけど、私の"最後"という言葉で、全員の悲しみが顕著に出始めた。


どうせなら、最後の最後まで話していたいから。

私にとって、2人は一番の親友だもの。


もし元気ならば、今頃華やかな高校生活が待っていただろう。そして、こうなったのも運命なのか。と徐々に受け入れていった日が今日である。


入院生活で毎回3人で集まるのが一番楽しかった。高校生の会話はたわいもない。そしてふざけあったこと。


私の高校生活は2人に支えられているのかとも思う。中学の時と比べると自分が正直になり、言いたいことをはっきり言えるようになった。

お互い、同じ学年や同じ考え。まとめると、みんなが同じ立場・・だったからこそ、苦しみを少しでも消して行けた。そんなこともあり「死」について、まともに考えるようになった。


小雪ちゃんはまだ入院するらしいけど、松山くんがいなくなると寂しいな。

今度は小雪ちゃんが退院すると、もう私一人か......。


また、孤独な日に戻るのか。もっと色々なこと、話したかったな。


今日は解散して、自分のベッドに戻る。 

ふと、大きな窓から夕焼けに染まる海と平原を眺める。波と風の一体化。端からの鶯の鳴き声。西が夕方なら、東は夜だろう。今日も一日お疲れ様、自分。


そしてこの窓を開けると、また新たな発見をするのだろうか。


無理だとは十分わかっているが......。

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