絶望と減退
今日は、入院していた日のことでも書こう。
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絶望と減退。
高校は合格したのだが、行けるはずがない。
だって、私の体にはガンが散乱しているのだから。
父親は既に他界していた。
原因が、ガンだったという。
これも遺伝子だったんだ。
あまりにも急すぎて、初日は現実を受け止められなかった。
全てが完璧だった私に、こんなことが起こるとは...。
母親が毎日来てくれた。
唯一それが、入院生活で楽しいことなのかも。
早くお母さんが来ないかと、毎日考えていた。
1日が元気な頃の10倍近く長かった気もした。
人生設計もバラバラに崩壊して、何も残らないのだろうか。
私が生きた証は、私が死ぬ時に抹消するのではないか。
なぜ、私は生まれてきたのか。
そんなことまで考えてしまい、半分鬱状態になっていた。
気分転換をしようと窓を開けたりもする。
私が窓を開くと、私が住んでいた家と同じように、草木が風邪で揺れる音とか、ホトトギスの鳴き声とか....。
大自然の音が聞こえていた。
しかしその時、初めて世界の美しさを感じた。
衰えていくものは、必ずこの景色をみるのかな。
一種の天国の入口のような...。
私の入院した病院は、地方の大きい病院で、部屋は4床だった。
たまたま窓側だったこともまた、小さな喜びだ。
「ねぇ。」
「あなたは何でここに居るの?」
いきなり男の子に話しかけられた。
隣には、私と同じ年齢の男の子がいた。
どうやら男の子は割と軽い病気なようで、もうすぐ退院することになっていた。
「がんが、散乱していたの。全てが完璧だったはずなのに...」
これが病院で初めての、人との交流の始まりだった。
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