おまけ

 暖かい午後の日差しの中、チャチャ=ジュネッタはひとり、寝室に籠っていた。


 いなくなった、あの武骨モノのことを思い、ひとり、枕を濡らしていた。


 ああ、わらわはなんという愚か者なのじゃ。


 何故、あのような結果を招いてからになって、気づいたのじゃ。


 もう、誰もわらわのことを愛してくれないのじゃ。


 愛しきシノジは帰ってこないのじゃ……。


 チャチャ=ジュネッタは再び、枕に顔をうずめて子供のように泣きじゃくる。




 彼女はひとしきり泣いた後、腹がぐうううとやらしい音が鳴り、自分がここ三日間ほど、ほとんど何も食べてないことに気づく。彼女は、ははっと力なく笑いながら


「こんな悲しい気分でも腹は空くのじゃな。誰かおらぬのか? わらわに何か食べるモノを持ってきてくれなのじゃ」


 チャチャ=ジュネッタは、ベッドの横にある小さな白いテーブルの上に乗せられていた小鈴ベルをチリンチリンと鳴らす。


 召使いがひとり、チャチャの寝室にやってきて、チャチャから用件を聞き、再び退出する。それから15分ほど過ぎたころであろうか? 寝室のドアをコンコンとノックされて、チャチャは半眠り状態から覚醒する。


 チャチャは、寝室の中に入ってくるようにと促す。ガチャリとドアノブが開かれ、身体中に包帯が巻かれた赤褐色の肌の男が車いすに座った状態で中に入ってくる。


 その男の姿を見たチャチャは両目からボロボロと涙を流す。チャチャの涙は今や誰にもせき止められぬほどにあふれ出る。


 男はただ黙って、自分に抱き着いてきた美の女神の頭を優しく撫でるのであった……。

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愛の果てにある哀歌(エレジー) ももちく @momochi-chikuwa

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