第3話
闘技場にて銅鑼が盛大に鳴らされる。ラッパ吹きたちは自分の呼吸が止まるかと思えるほどにラッパを吹き鳴らす。闘技場の観覧席には帝国の民衆たちが押し寄せて、立ち見せざるをえないほどの盛況ぶりであった。
ついに武闘大会の決勝戦が執り行われるからだ。数多の戦士たちが、この闘技場で汗と血を流し、三国一の美女を手に入れんと、己の武を競いあってきた。
東の入り口からは赤褐色の肌の戦士が腰蓑一枚と右手に金属製の
対して、西の入り口からは齢20に成りたての美麗なエルフの若者が同じ装備で入場するのであった。
民衆の歓声はまるで雷鳴のように闘技場に響き渡る。戦士たちにとって、これ以上、名誉なことなどあろうものか。
特別観覧席で、ある男が立ち上がり、沸き立つ民衆に向かって右手を上げる。
「私の名はアサネギ=ジュネッタである! 民衆よ、私の声をよく聞くのである!」
オリエンタル帝国・第1皇子:アサネギ=ジュネッタが歓声を上げる民衆に静まるようにと宣言をする。それを受けて民衆たちは一斉に静まり返り、第1皇子の次の言葉を待つ。
「私はこの武闘大会がより一層、盛り上がるようにと良案を考えついたのである! この決勝戦のみ、どちらかが再起不能の傷を負うまで負けを宣言することを禁ずるのである!」
アサネギ=ジュネッタがそう宣言し終わったと同時に、再び、闘技場には雷鳴の如くの歓声が轟き響く。あろうことか、民衆たちは熱に浮かされ、第1皇子の宣言以上の望みを声に乗せて放つ。
――殺せ! 殺せ! 殺せ!――
アサネギは、ははっと苦笑し、自分の席に座る。そして、隣に座る自分の妹に声をかける。
「いやあ、すまないすまない。盛り上げようとしたのだが、これは少々やりすぎたのである」
「お、お兄様! なんてことを言い出しのじゃ! これでは、シノジ=ザッシュが死んでしまうのじゃ!」
「ん? 何を言っているのである? あのメドゥーサ殺しのシノジ=ザッシュであるぞ? いくら、自分の愛弟子であるミサキ=シャンテリティと言えども、さすがにシノジを殺すことなど出来るはずがないのである。せいぜい、ミサキが一矢報いることくらいなのである」
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