第7話 日常の裏側に
遥の話を聞くに、どうやら自分や世間の人が知らない間に、世界は終わりかけている、と言うことらしい。
すごくざっくり言うと"年末に隕石衝突で人類滅亡"。もうちょっと細かく言うと、"絶滅まではいかないけど人口は大幅に減少し、今の文明は維持できないだろう"と言う。
なんというか猛烈に現実味がない。加えて遥が改造人間ってどういうこっちゃ。わけがわからない。
「わけがわからない」
そのまんま口に出ていたらしい。
「えっとね、私の両親がね、科学者なのは知ってるよね?」
「ああ、おじさんとおばさんな。確か機械工学と自然科学だったっけ」
「そう。それでね、母さんは色々なデータからエレー彗星の衝突を予測したんだけど、学会では相手にされなかったんだ。それこそ天文学的な確率だ、ってね。でも、国の一部の偉い人たちが母さんの予測を軽視できないって、父さんに彗星に対抗するための兵器を作るように頼んだの。」
「それがどうして改造人間、って話になるのさ、なおさらわけがわからない」
「秘密にする為よ」
「はっ??」
「彗星を壊すための兵器なんて話になったら、普通に考えてとてつもなく大型になる訳。そんなものは、国民にバレたら混乱が予想される以上、作れない。そこで、父さんの専門研究分野の話になるんだけれど、父さんの専門は有機機械工学と言って、すごく雑に説明すると、人体の構造と機械を組み合わせることで、機械だけでも人間だけでも出来ないことを実現する、というものなの。父さんは、秘密裏に作る他ない兵器を、その有機機械工学を用いて作り上げたの。改造人間という形で」
あまりのスケールに頭がついてこない。だがこの疑問だけは口に出せた。
「だとして、なんで遥がそうなるのさ?」
「それはね、その兵器が、私にしか使えなかったから」
「どういうこと?」
「有機機械工学ってね、まだ発展途上の技術なの。簡単に言えば、素体になる人が誰でもいいってわけじゃなくて、適合する人がやるしかないの。だから、私がなるしかなかったの」
あまりに現実味がない。おかげですごく馬鹿なことを聞いてしまう。
「......それ、危なくないの?」
「正直、すごく危険だって言われてる。それに怖いよ。でもね、私は守りたい人がいたからやることにしたんだ」
「......そっか」
正直、言葉にならなかった。
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