⑧ 何かがどうにかなりそうな
「残念ながら、お開きの時間らしいな」
五十口径ニューナンブ・リボルバー改の銃口を突きつけながら、とっつぁんは言った。
「言い残すことはあるかい。それとも、命乞いでもしてみるか?」
「アホ抜かせ。やっと面白くなってきたところだぜ……」
「強がんなよ。その銃創じゃ長くは持たねぇ」
煙草をペッと吐き出しながら、とっつぁんは「なぁ」とアタシに語り掛ける。
「お前さん、本当のところは何がしたかったんだい? 青春生き残りゲームとか抜かしてたが、青春? それがお前さんの望むものだったかい」
「どうだかな……それすらも、アタシにはまだ見えてねぇよ」
本当のところ、とアタシは思う。最初から欲しいものなんて何もなかったのかもしれない。
人を殺して金を得る、怪力しか取り柄のないアタシ自身の生き方に、嫌気が刺して自暴自棄になっただけなのかもしれなと。我武者羅に手足を振り回して、正義のヒーローっぽく振る舞えば、何かがどうにかなるのかもしれない。そう思いたかっただけなのかもしれない。
勘違いしているのは、アタシの方だったのかもしれない。
「でも……諦めたくは、ないな……」
こんな状況でもアタシは、何かがどうにかなりそうな高揚感に襲われていた。一体この正体はなんだろう。分からない。分からない。分からない。
分からないまま、死にたくない。
「まだ……まだ終わっちゃいねぇ」
「そうかい。じゃ、終わらせよう」
チャキっと銃を構え直す音がして、本能的にヤバいと思った。
とっつぁんが何かを言いかけた、その時。
「こらーーーーーっ! 何を、何をしてるんだーーっ!」
それはこの数日間、嫌というほど聞いてきた声だった。
頼んでもいないウンチクや、鼻に付く小賢しい物言いや、恥ずかしそうに青春を語る口調や、青臭い告白を真っ直ぐに飛ばしてきた、あの声が。
「僕の、僕の寂に、何をしてるんだお前はぁぁぁぁー!」
その叫び声は真っ直ぐに、アタシの方に向かってきた。
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