第8話 終わりと後日談
どれくらい意識を失っていたのだろうか。頭ががんがんするし、体もそこかしこが痛い。
……というか。
「ここ、どこだ」
なんだかちょっといかがわしい空間の中に、俺はいた。
やけに広いベッド、そこの枕元にある時計で時刻を確認すると、夜の九時過ぎになっている。
「えーと、なんでだ」
俺は今日一日中何をしていたのだろうか。思い出そうとしても、記憶が定かで無い。
「……そんで、だ」
俺の視界に映ったもの――いや、人。それに言及する。
「あの人、誰だ」
部屋の隅には、何やら小さな女の子が倒れている。このまま見捨てるわけにもいかず、俺はその側に寄る。
「……あの、大丈夫?」
と声をかけたところで、俺はその女の子の格好に目を丸くする。
全裸だった。
女の子の周囲には、その女の子が着用するには少し大きいであろう下着が転がっている。
「…………あ、えっと、ここは?」
女の子は澄んだ、それでいてどこか弱々しい声でそう返す。
「……えーと、俺もわからない。気がついたらここにいた。……怪我とかない?」
なるべく顔より下は見ないようにして、その子に話しかける。
「……えと、その……全身が、じんじんします」
「そうか。それは……まあ、俺もだ」
二人揃って、である。こうなった理由がわからない。二人ここに監禁されて殴られたとか? それは怖いなあ。
「……とりあえず、ここから出ることにしよう」
俺は荷物を纏めようとする。脱衣所に行って鏡を見ると、何故か女性もの下着を着用していたので、慌てて脱いでおいた。
「えと、その……」
女の子は所在なげな表情を浮かべながら、俺に声をかける。
「どうしたの?」
「……えと、帰る場所が、わからないです……」
「……は?」
少女の言葉に、俺は絶句する。帰る場所がわからないって、それは警察案件ではなかろうか。
「……警察は、駄目です」
「そ、そうか……えっと、どうして?」
「なんとなく、駄目そうな」
「……なるほど?」
何やら込み入った事情がありそうだった。
どうすべきかなあ、と思案する。しばらくして、俺は答えを出す。
「……そうだな、じゃあ、とりあえず俺と一緒に俺の家に向かおう」
「……あ、わかりました。では、よろしくお願いします」
少女はそう丁寧に礼を言って、俺に頭を下げるのであった。
○
それから十年後。俺はあの少女と家族になった。
少女とは次第に打ち解け、今では互いに遠慮が欠片も入り込まないような関係になっている。
まるで、ずっと昔から一緒にいたかの如く、俺とその少女は気が合ったのだった。
きっとこの子となら、幸せな家庭を築けるだろう。
おしまい
最後の一つは譲らない 眼精疲労 @cebada5959
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