第6話

マルチナが駆けつけた時、シンデレラは、大きな木の下で泣いていました。


魔法使いになったマルチナは、泣いていたシンデレラに優しく話しかけ、綺麗なドレスと美しい髪飾りやネックレスを魔法で出してあげました。

さらに、カボチャを馬車に変え六匹のネズミを馬に、犬を馭者に変えました。


そして最後にマルチナは、あの木箱を取り出しました。旅の間、どんな事があっても決して手放そうとしなかった大切な物が入った木箱、その中にはキラキラ輝く〔ガラスの靴〕が入っていました。シンデレラの足首にあるガラスの御守りと同じ色をした、そのガラスの靴は、シンデレラの足にぴったりと合いました。


舞踏会に向かうシンデレラと、マルチナは、ひとつだけ約束をしました。


[12時なる前に、あの大きな木の下に来てほしい。]


それは、マルチナ最後の願いでした。


しかし、初めての舞踏会、素敵な男性とのダンスにシンデレラは、時を忘れてしました。



とうとう12時の鐘が鳴り始めてしまいました。この鐘が鳴り終わる時、自分は死ぬ。


それは、魔女との契約。自分の命と引き換えに魔法を使えるようにしてもらったマルチナ。何のためらいも彼女にはありませんでした。


自分はシンデレラ (ティーナ)の為に何もしてあげる事が出来なかった。

だが魔女と契約を結べば、シンデレラの願いを叶えてあげる事が出来る。自分の命など惜しくはなかった。


でも…美しく変わったシンデレラの姿を見て、マルチナは思いました。最後にもう一度だけ会いたいと。


しかし、シンデレラは間に合いませんでした。


それでも、マルチナは満足でした。

最後にあんなに嬉しそうなシンデレラの可愛い笑顔を見る事が出来て、マルチナは幸せでした。


最後の鐘が夜空に鳴り響き、明るい月の光に見守られ、マルチナの姿は消えていきました。




鐘の音が鳴り終わりしばらくして、大きな木の下に魔法がとけて、ボロボロの服に戻ったシンデレラが現れました。


しかし、そこにはもう、魔法使いはいませんでした。


シンデレラは大きな木の下で貝殻の形をしていて、上下に開く事が出来るペンダントを拾いました。開けてみると、中には小さな写真が入っていて、そこには、赤ちゃんを抱いた魔法使いの女性と父親らしき男性、さらに男の子が二人写っていました。シンデレラは魔法使いの女性への感謝を込めて、そのペンダントを大切にしました。

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