山田一平君の苦悩

UMI(うみ)

山田一平君の苦悩

 山田一平はどこにでもいるごくごく普通の高校生だ。父は中小企業に勤めるサラリーマン。母は専業主婦。その間に生まれた一人息子だ。成績は可もなく不可もなく。容姿は人並み。絵に描いたような普通の高校生だ。だがそんな普通の彼には普通ではない悩みが二つあった。

「山田先輩、受け取って下さい」

 振り向いた先には顔を赤らめた男子高校生がいた。季節は春爛漫、桜吹雪の舞う中その子は立ってた。一平よりも、頭一つ分小さい背丈。童顔の顔は可愛らしいともいえる。そんな彼が顔を赤らめてもじもじとしている。

(この展開は……まさか)

「これ受け取って下さい!」

 勢いよく差し出された、それは一通の封筒。ご丁寧にハートマークのシールを張られた、それ。うん、どう見てもラブレターである。ありがとうございます。一平は引きつった笑みを浮かべた。男子生徒は封筒を押し付けると、一目散に駆け出していった。

(また……か…)

 手に残された一通の手紙だけ。内容は可愛らしいハートマークのシールを見ればよくわかる。

 何故か一平は男にもてる。

 理由はさっぱりわからない。理由は定かではないが、一平はこうして一か月に一回男子高校生からラブレターをもらったり、直接告白されていた。これが一平の一つ目の悩み、そして苦悩だった。ため息をつきながら読む気もしないラブレターを鞄にしまった。

「一平君、おはよう」

 そしてもう一つの一平の苦悩がやって来た。鈴の音を転がすような声が一平にかけられる。隣に幼馴染の橘美奈子が立っていた。美奈子はキラキラとした輝きを背負っている。ちなみに一平はこれをキラキラオーラと呼んでいる。彼女は学校のマドンナだった。言ってみれば高嶺の花。名前の通り彼女はとてつもない美少女だった。学校の全男子からの羨望を彼女は一身に受けているといっても過言ではない。

「お、おはよう美奈子ちゃん」

 若干動揺気味に答える。見られなかっただろうか、手紙を。いや、大丈夫なはずだ。直ぐに鞄にしまって良かったと一平は心底思った。この彼女こそが一平の二つ目の苦悩の原因だった。多くの男子生徒同様に一平は彼女に月並みな恋をしていた。

「一平君、どうしたの?」

 動揺が顔に出ていたのだろうか。

「いや、何でもないよ、美奈子ちゃん」

 一平は慌てて取り繕った笑顔を見せた。

 美奈子は優しい。優しくて美人で、おまけに頭もいい。これならもてて当然だ。むしろもてなければおかしい。

「そうそう、一平君に聞いて欲しいことがあるんだ」

 嫌な予感が脳裏を過るが、美奈子の『聞いて欲しい』ことを無視するという選択肢は一平に存在しなかった。それぐらいべた惚れなのだ。

「うん、実は一平君だけに話すんだけど」

(ああ、やっぱり……)

 一平は天を仰いだ。

「隣のA組の吉田沙也加ちゃんのことが好きになっちゃったんだけど。どう思う」

 少し頬を赤らめながら美奈子は言う。そう、美奈子は女の子が好きだった。好きな女の子から恋愛相談を受ける。しかも相手は同じ女の子。一平の気持ちは、お察し下さいというレベルだ。

「えーと、いいんじゃないの……」

 一平はおざなりに答える。沙也加は一平と同じクラスの女子だ。地味で大人しく、少し勉強が出来るらしいということしか知らない。

「だよね。さすが一平君、わかってる」

 相変わらずキラキラを背負いながら美奈子は言う。

「大和撫子っいうか……清楚っていうか」

 美奈子は恋する乙女の顔で沙也加を賛美する。

「告白しようかな。でも嫌われちゃったらやだし」

 美奈子は惚れっぽい。誰それが好きだと言っても告白したことは一平の記憶になかった。告白する前にまた別の女の子を好きになってしまうからだ。

(どうせ、今回もそうに決まっている)

 一平は自分自身にそう言い聞かせた。好きな女の子が自分をただの友人としか思っていなくて、しかもその子の恋愛対象は女の子という複雑怪奇な状態が一平の二つ目の苦悩だった。


 昼休みの購買部は文字通り戦場だ。人気のある総菜パンは食欲の権化と化し殺気だった生徒たちに次々と奪われていく。一平はその戦場を横目で見ながら購買部の隣に併設された食堂で弁当をほおばってた。弁当組の自分は間違いなく勝者だなと思いながら。

「お、あれ橘さんじゃないのか?」

 隣でカレーを食べていた一平の友人が指差す。

「今日は橘さんはパンなのか。それにしてもいつみても美人だよなー」

 美奈子は弁当だったりパンだったりといつもその日の気分によって違う。今日はどうやらパンの日だったのようだ。

(俺も弁当止めてパンにしようかな……)

 そうしたら上手くすれば昼食も一緒に食べられるかもしれない。そんな涙ぐましい妄想を一平がしていた時だった。美奈子は一人の女の子の側に近づいて行った。今朝美奈子が話していた吉田沙也加だ。沙也加は購買部の戦場に入り込めずおろおろしていた。美奈子は一言二言話しけると、購買部へと向かう。その途端、殺気立っていた猛者たちがまるでモーゼの海のように二つに割れた。美奈子は悠然と購買部のおばちゃんの前に立つと最後の焼きそばパンをキラキラオーラを全身に背負いにっこりと笑って手に取った。そして悠々と来た道を戻ると沙也加の前に差し出した。沙也加はぺこぺこと頭を下げて、それを受け取る。

「橘さん、ぱねえ……」

 一平の友人は感嘆のため息を漏らす、一平は驚いていた。記憶にある限り美奈子が好きになった女の子にこんな行動を取ったことはない。いつも遠くから眺めているのが常だったからだ。『告白しようかな』そんな今朝の美奈子の言葉が脳裏をかすめた。


 帰り道、河川敷を美奈子と一緒に一平は歩いていた。徐々に太陽が沈み空が赤く染まっていく。一平の苦悩を知らず美奈子は無邪気に話す。

「今日さ、沙也加ちゃんに購買で会ったんだ。最後の焼きそばパンを譲ってあげたら凄い喜んでくれた。ちょっとは脈ありかな、なんて」

 美奈子はキラキラオーラを更に輝かせて言った。

「ふーん、そう、なんだ。良かったね」

 あれを譲るというのだろうかと思いながら一平は返事をした。一平は美奈子に好きだと告げたことはない。きっと告げた瞬間、幼馴染であろうとも、この友人関係が終わってしまうのは火を見るより明らかだからだ。こうして一緒に帰ってくれることも話しかけてくれることもなくなるだろう。一平にはそんな勇気はない。

「ねえねえ、一平君」

「なに?美奈子ちゃん」

「一平君、また男の子からラブレターもらったでしょ」

 一平は地面から一メートルぐらい飛び上がりそうになった。

「な、なんでそれを」

「今朝見ていたんだ」

 見られていた!ぬかったと、一平は思った。

「そうなんだ……」

「可愛い子だったね」

「そう、かな……」

「いいなあ。私もラブレターとかもらってみたい」

 美奈子はラブレターを山のようにもらっている。だが美奈子は男からのラブレターをラブレターとしてカウントしていないのだ。

「付き合うの?」

「え、いや。ちょっとタイプじゃないから」

「勿体ないなあ」

 美奈子はどういうわけか一平のことも同じ同姓愛者だと思い込んでいた。何故にそういうことになったのか一平もわからない。だがだからこそ、美奈子は一平に恋愛相談をしてくるのだろう。同じ同志か何かと思い込んで。

「一平君はもてるのにどうして誰とも付き合わないの?」

「え?」

「色んな子から告白されているのに、勿体ないよ」

 まさか男に興味がないから。何よりも君が好きだから。その一言がどうしても言えない一平だった。

「でも一平君に告白する人たちを私尊敬するな」

 だってさ、と美奈子は続ける。

「好きな人に告白するって凄く勇気にいることでしょ」

「そうだね」

 それは素直に一平も頷いた。顔を真っ赤にしてラブレターを渡してきた男の子を思い浮かべる。どれほどの勇気を持って渡してきたのだろうか。そんな勇気のない自分がとてつもなく情けない存在に感じた。

(断るにしても……)

 これからはその勇気に応えるためにも誠意を持って断ろうと一平は決めた。

「私も勇気を持たなくちゃな」

 美奈子はそうぽつりと呟いた。その後二人はただ黙って夕暮れの河川敷を歩いて帰ったのだった。


 季節は移り変わり梅雨も終わり、本格的な夏がやって来た。

「好きです!付き合って下さい」

 相も変わらず一平は告白されていた。今回は一つ年上の先輩だった。蒸し暑い体育倉庫の中で男二人。一方はしかも愛の告白をしている。シュールな光景だなと一平は暑さでうだった頭で考えた。

「折角ですけど、俺……」

 男に興味ないんです。男と付き合う趣味はないんです、そう言いかけて思いとどまった。少し前の一平ならそう言ってその場を立ち去ったに違いない。

(でも……)

 目の前の先輩は真剣な表情で真っ直ぐ一平を見ていた。『好きな人に告白するって凄く勇気のいることでしょ』美奈子の言葉が脳裏を過る。

(そうだ……)

 誠意を持って答えるとその時決めたのだった。

「ごめんなさい」

 一平はそう言って頭を下げた。今まで告白してくれた人たちへの謝罪でもあった。

「俺、好きな人がいるんです」

「そっか……」

 先輩は残念そうではあったけど、どこかすっきりした表情だった。

「それじゃ仕方ないよな」

 そう言って頭をぽりぽりと掻く。

「でもはっきり言ってくれて嬉しいよ」

 日焼けした顔で先輩はにかっと笑った。

「本当にごめんなさい」

 一平は再度謝った。

「謝ることじゃないだろ」

「すみません」

「また謝る。まあ、そんなところが好きなんだけど」

 先輩は困ったように顔を赤らめた。

「ところで、聞いてもいい?」

「はい?」

「山田君の好きな人って誰?」

「……言えません」

 弱虫、と一平は心の中で自分を罵った。美奈子本人どころか誰にも言えない自分が酷く矮小な存在に思える。

「まあ、いいけど。その人と上手くいくといいな」

「ありがとうございます」

 そう言って先輩は蒸し暑い体育倉庫から出ていった。もし自分が美奈子に告白して振られたらと思う。あの先輩みたいに笑えるだろうか。好きな人と上手くいけばいいなんて言ってあげられるだろうか。

(無理だろうなあ……)

 はっきり好きな人がいると言えた時は一歩前進したように思えたのに。やっぱり自分は意気地のないままだ。あの先輩のような勇気が欲しいと思う。一平はため息をついた。自分の吐く息までも暑くてうっとおしかった。

 

 数日後の夜、宿題をやっていた一平のもとに電話が入った。携帯を手に取ると美奈子からだった。一平は迷うことなく電話に出る。

「もしもし、美奈子ちゃん」

『ごめん……一平君、夜に……』

「いや、気にしてないよ。ゲームしてただけだし』

 一平は咄嗟に嘘をつく。こんな夜中に美奈子が電話をかけてくるなんてただ事じゃない。実際、美奈子の声は涙声だった。

『一平君、あのね……私ね、ぐす、あのね』

「落ち着いて、美奈子ちゃん。ゆっくりでいいから』

『ありがとう……あのね、私』

「うん」

『沙也加ちゃんに、告白したの……』

「!」

 一平は携帯を落としかけた。まさか美奈子が告白に踏み切るとは思ってもいなかったのだ。それも自分に相談もせずに。

「そう、なんだ」

 振るえそうな声を鼓舞して冷静さを装う。

『でも。女の子は、駄目だって……』

 美奈子は今にも泣き崩れそうだった。

「美奈子ちゃん、会おう!今すぐに」

『え?』

 一平は居ても立っても居られない。

「公園、公園で待ってるから」

『一平君……』

 一平は電話を切ると、財布と携帯をデニムのポケットに突っ込むと家を飛び出した。あんな状態の美奈子を放ってはおけない。


 簡単な遊具しかない小さな公園。子供の頃美奈子とよく遊んだ公園だった。美奈子は既に来ていて、ブランコに乗っていた。いつもの輝くようなキラキラオーラは見る影もなかった。一平は静かに近寄ると、途中コンビニで買った冷えた缶コーヒーを美奈子黙って差し出した。

「……ありがとう」

 小声でお礼を言うと美奈子は受け取ってくれた。一平は隣のブランコに腰掛けた。

「……この公園でよく遊んだね」

 美奈子が口を開く。

「そうだね」

「ブランコ取り合いしたね」

「うん」

「一平君は勢い余って地面に落っこったね」

「うん」

 一平は缶コーヒーの蓋を開けて一口飲んだ。甘ったるい砂糖の味が胃に染み渡る。

「少しは落ち着いた?美奈子ちゃん」

「うん……」

 美奈子は缶コーヒーを手に持ったままだった。

「飲みなよ。まあ、甘いだけだけど」

「ありがとう」

 言って美奈子は缶コーヒーの蓋を開けた。

「冷たくて美味しいよ」

 ようやく美奈子が笑顔を見せる。

「……聞いてくれる?」

 美奈子はゆっくりとコーヒーを飲みながら尋ねる。

「うん。何でも聞くよ」

 一平は頷いた。Tシャツがべたつくのは暑さのせいだけではないだろう。

「さっきも電話で話したけど、沙也加ちゃんに告白したの」

「うん」

「凄い勇気を出して」

「うん」

「でも駄目だった」

 美奈子は項垂れる。キイキイとブランコがきしむ音だけが夜の公園に響く。

「勇気出したんだ」

「うん」

 ぽたりと美奈子の瞳から涙が一粒零れ落ちた。ハンカチを持ってこなかったことを一平は後悔した。

「駄目なのかな、私が人を好きになっちゃ駄目なのかな」

「そんなことないよ!」

 一平は思わず叫んでいた。

「人を好きになるなんて、当たり前のことだろう。誰にも否定なんか出来ない。駄目なことなんて絶対にないよ」

「一平君……」

 それは一平自身自分に言い聞かせる言葉でもあった。だって一平は美奈子のことが好きだ。ずっとずっと好きだった。今だって彼女の為ならなんだってしてやりたい。例え、自分の気持ちが報われないものだったとしても。

「それに美奈子ちゃんは凄いよ」

「凄いって?」

「勇気を出して告白したんだろう」

「うん」

「僕に告白した子を尊敬するって言ってたじゃないか。僕も美奈子ちゃんを尊敬する」

 美奈子は涙を拭って一平を見た。嫌われるかもしれない、話も出来なくなるかもしれないと、恐れて美奈子に思いを告げられない自分と比べて美奈子は凄いと一平は素直に思った。

「僕も美奈子ちゃんのような勇気が欲しいよ」

「一平君も好きな人がいるの?」

「うん」

「誰なの?」

「ごめん、今は言えない」

 そう、目の前に。

「でも告白出来ないんだ」

「そう、なんだ」

「美奈子ちゃんみたいな勇気がないくて」

 一呼吸置いて一平は話し続けた。吸い込む空気が酷く暑い。

「今の関係が壊れるのが怖くて。嫌われるくらいなら今のままでいいかなって……ただの言い訳だよね」

「いつか告白できるといいね」

 美奈子は優しく静かに言った。

「うん、僕もそう思っている。まだ美奈子ちゃんみたいな勇気はないけど」

 勇気を持てればいいと思った。目の前の大好きな女の子に好きだって言える勇気が持てればいいと。

「好きな人に好きって言うのがこんなに大変なことだとは思わなかった」

 美奈子はもう泣いてはいなかった。

「うん、本当にそうだね」

 ただ好きな人に好きだと告げるだけのことが、どうしてこんなに辛くて勇気のいることなんだろう。一平は空になった缶を投げ捨てた。見事に缶はゴミ箱にホールインワンした。美奈子はパチパチと拍手する。

「凄いね」

「これでも野球部だから」

 そう言って、美奈子の方を見やった。笑顔を浮かべる美奈子を見てほっと胸を撫でおろす。

「ありがとう、一平君。なんか、元気出た」

 そう言うと美奈子は元気よくブランコを揺らし始めた。

「応援するから、私!」

「え?何を」

 勢いをつけて美奈子はブランコを漕ぎながら言った。

「だから一平君も応援して!私が誰かをまた好きになれるようにって」 

 きっと、と一平は思う。沙也加のことが美奈子は本当に本当に好きだったのだ。今まで何人もの女の子を好きになってきた美奈子。でも誰も告白までには至らなかった。その美奈子が告白したのだから。きっと本当に恋だったのだろう。

「そして、いつか教えてね。一平君の好きな人」

「うん、約束する」


 今は言えないけれど。

 いつかきっと。

 それだけの勇気を持てたら。

 美奈子に告げよう。

 君のことが好きだって。

 ブランコを漕ぐ美奈子はキラキラと輝いていた。


 一か月後、二人はいつもの通り帰り道の河川敷を歩いていた。夏は少しづつ遠ざかり秋の足音が聞こえ始めていた。それ以外はいつもと変わらない夕暮れの風景なのに何故だか一平の目には懐かしく感じられた。美奈子は失恋のショックから大分立ち直ったらしく、キラキラオーラもすっかり元通りだ。そして一平はある覚悟を決めていた。一か月かかけて固めた覚悟だった。美奈子に好きな人は今はいない。ならば今がチャンスだと一平は考えていた。

 告白しよう美奈子に。

 勇気を持って。

 その勇気をくれたのは美奈子だ。そしてもし振られてしまったら笑おう。笑って彼女の幸福を祈ろう。あの体育倉庫で告白してくれた先輩のように。

「あの、美奈子ちゃん」

「あの、一平君」

 二人の声が重なった。

「あ、お先にどうぞ……美奈子ちゃん」

 気勢をそがれた一平は美奈子に譲った。

「え、いいの?」

「うん」

「ありがと、あのね、一平君」

 美奈子はキラキラした笑顔を振りまいて言った。

「転校して来た裕子ちゃんのことが好きになったの!」

「え!?」

 一平はすっかり忘れていた。美奈子が惚れっぽいということに。

「すっかり失恋のショックから立ち直れたよ」

 美奈子はこれでもかとキラキラオーラを全開にして言った。

「あ、そう……」

 あの公園での出来事は一体何だったのだろうかと一平は空を見上げて逡巡した。

「また誰かを好きになれるなんて……一平君のおかげかな」

 ちっとも嬉しくない。全然これっぽっちも嬉しくない。

「で、一平君の話ってなに?」

 もはや告白できる雰囲気ではなかった。

「あ、いや、何でもない、です」

「そう」

 それきり美奈子は追及してくることはなかった。

「今度裕子ちゃんとご飯食べに行く約束したんだ」

 うきうきと美奈子は鈴を転がすような声で言う。

「そう、なんだ。良かったね」

 他に何が言えるだろうか。何もかも遠いお空に飛んでいけ。


 山田一平君の苦悩は尽きない。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山田一平君の苦悩 UMI(うみ) @umilovetyatya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ