第二話
「樹里さんって、こういうとこ来んの?」
俺が尋ねると、彼女が声に反応してこちらを向いた。そんな何気ない動作でも、俺が嬉しく感じているなんて、彼女は思いもしていないのだろう。
「行ったことあるよ? 友達とプリクラ撮ったり……」
「へえー」
半信半疑の言葉が口をつく。連れ出した俺が言うのもなんだけど、ゲーセンにいる樹里さんというのは、あまり上手く想像が出来なかった。
「――もしかして、小学校の時のイメージで話してるの?」
「いや、そんな、まさかあ……」
図星だった。確かに、高校生ともなれば寄り道もするだろうしなと思い直す。
「本郷くんはプリクラ、撮ったことある?」
「……男だけであんま撮らんと思うぞ」
俺自身も撮ったことはないし、他の男友達が撮ったというのも、あまり聞いた覚えがない。恋人がいれば話は別だと思うけれど、残念ながら俺は生まれてこのかた恋人なんて大層なものが出来たことはなかったので、近い内に撮る予定も今のところなかった。
「確かに、プリクラって女の子のイメージだよね」
「というか、値段高くないか? わざわざ高い金を払ってまで、詐欺みたいな写真を撮る気持ちがまるで分からん」
「そんな何回も撮らないよ? お祭りとか、誕生日とか……そういう記念日だけ」
「――ふうん」
それでプリクラに関しての話題は終了した。おそらく今日は、樹里さんのいう記念日とやらには入らないだろう。
目の前では、妹の美羽が樹里さんの弟の達也くんの腕を引っ張ってクレーンゲームコーナーを物色しているのが見えた。達也くんがめちゃくちゃ困った表情をしているのがここからでも分かる。美羽、気付いてやれ。でもまあ、美羽のテンションが高い理由も、分からなくはないけれど。
事の始まりは美羽の一言だった。
絶賛テスト期間中の俺は、その日も普段よりも早い時間に家へ帰宅した。
「あれ、兄ちゃん今日も早いんだね」
キッチンで何か飲み物を取ってこようとした俺は、ちょうどキッチンから出てきた美羽と危うくぶつかりそうになった。片手にコップを持ったままでも器用に避けたのは、若さゆえの反射神経からだろうか。そこまで歳が離れているわけじゃないけど。
一応「ただいま」と声をかけたはずだが、美羽には聞こえていなかったらしい。
「テスト期間って言っただろ。小学生には分かんねーだろうが、高校生になるとテスト期間っていって、部活が休みになって早く帰れる日があんだよ」
「うへえ……よく分かんないけど、また兄ちゃんの自慢が始まった……」
「自慢じゃねえよ」
軽く頭を小突くと、美羽が変な声を出してうめいた。
「あ、じゃあ兄ちゃんはしばらく部活なくて暇なの?」
「暇じゃねえよテスト期間だっての」
「暇ならさ、今度の土曜日にゲーセン付き合ってくれない?」
「だから暇じゃねえって……ああ? 別に保護者いなくても明るい内なら大丈夫だったろ。まさか夜までいる気なのか?」
「違うけど、保護者がいるんだよ……」
眉尻を下げた美羽が、切なげに声をもらす。
「今度達也と行こうと思ったんだけど、達也の両親が厳しいらしくて……誰か大人がいないとダメないんだってさ……」
「……マジかあ」
達也くんの両親ということは、すなわち俺のクラスの高梨樹里さんの両親ということでもある。確かに、樹里さんの家庭はなんとなく厳しそうに思う。樹里さんの両親を見たことがないから完全に偏見だ。俺の両親なんて、俺がいくら赤点を取ろうが、自業自得の一言で済ませてしまうのに。
進級さえ出来たら、何をしてもよっぽどのことでない限りは咎めないのが俺の両親の教育方針らしいので、その辺りは寛容でありがたいとは思う。
美羽の言い方から考えるに、「保護者がいる」の条件をつけた達也くん側の方には、現時点で一緒にゲーセンに付き合ってくれる大人がいないのだろう。もしそうでなかったら、達也くん、もしくはその両親から条件を聞いた時にでも、誰かが保護者役に名乗り出てくれているはずで、今この瞬間に美羽が俺に頼むようなことにはなっていないだろうから。
俺が断った時、美羽たちに他のあてはあるのだろうか。あんまり身を入れてテスト勉強をしていないとはいえ、一応テスト期間の、しかも土曜日の数時間を彼らの付き合いに割けるほど、俺に余裕はあるのだろうか。
ただ、その時の俺にある考えが浮かんだ。
「明日まで待ってくれるか」と美羽に断り、俺は部屋に戻った。寝るまでしばらく時間があったので、鞄から適当に教科書を取り出して、書かれている本文を読んだり、問題を解いてみたりして過ごした。机の上で開かれた教科書の内容は、開いた最初は半分も理解していなかったけれど、何度か読み込むことでなんとか形になった気がした。
彼女に勉強を教えてもらっていた、ごく短い期間のことを思い出す。彼女は今でも、人に勉強を教えるのが上手いのだろうか。それを確認するすべは、今後一生訪れることはないのだろうけれど。
✿ ✿ ✿
きっかけがあったとしても動けないのであれば、そのきっかけは、存在しなかったのと同じだ。そう思ったから、俺はダメ元で彼女に尋ねた。
あの頃の、何も行動出来なかった俺を追い越して、今の俺は彼女に声をかけた。
「樹里さん、土曜日もし空いてたら、付き合って欲しいことがあるんだ」
✿ ✿ ✿
そんな経緯を経て今に至るわけだ。正直、オッケーしてくれるかは半分賭けだったけれど、思い切って声をかけてよかったと思う。当日、律儀に俺と樹里さんという保護者(十六歳以上)を連れてくることに成功した美羽は、邪魔者はいないとばかりに喜々として達也くんを連れまわしている。その様子を、俺と樹里さんは離れて見守っていた。
「本郷くんはテスト勉強、大丈夫なんですか?」
ふいに彼女が尋ねる。明るい電子音が鳴り響く中で、一気に現実に引き戻された気がした。
「……まあ、大丈夫ではないけどさ。でも妹に頼まれちゃったら、中々断りづらいだろ?」
「……妹想いなんですね」
彼女から目線を外すようにして、俺はクレーンゲームの商品を見つめた。おそらく彼女は、本当に「弟たちの付き添い」に来てくれたのであって、他の意図なんてものは考えていないのだろう。でも俺にはあった。俺は、自分の妹と彼女の弟をダシにして彼女に声をかけたのだ。そんな目で見つめられると、良心が痛んでしまいそうだった。しばらく目の合わない俺を不思議がるように見ていた彼女は、何かを思い出したように自分の鞄に手をのばして、鞄のジッパーを開ける。そこから見えたものに、俺は思わず顔をしかめてしまった。
「……うわ、単語帳」
彼女が鞄を開けて中から取り出したのは、学校で使っている古文の単語帳だった。ページのあちこちに付箋が貼られていて、普段から使い込んでいることが一目で分かる。俺の新品同様の単語帳とは大違いだった。
「月曜日最初のテストですからね」
「……俺、古文苦手なんだよなあ。見てるだけで頭が痛くなりそうだ」
「でも、古文のテストって、この単語帳を暗記すればいいところ、ありますよね?」
「……え?」
「古文の河村先生って、基礎がちゃんとしていればとても分かりやすい授業で、私は好きなんですよね。逆に英語の本田先生は――」
「ちょ、ちょっと待って樹里さん! ストップ!」
キョトンとしている樹里さんをよそ目に、俺はスマートフォンを取り出してメモアプリを開いた。
「もう一回、言ってもらっていいかな?」
樹里さんから、一通りの教科ごとの先生の傾向と対策を聞いてから、俺は彼女に単語帳をしまわせた。
「教えてくれてサンキュー。でも、せっかくゲーセンに来たってのに、勉強しかしないなんてつまらないだろ?」
そして、俺も美羽よろしく何かのゲーム機を勧めることにした。このあたりは俺たち兄妹の似ている部分なのかもしれない。
「でも、あんまりこういう場所のゲームやったことないから……」
「……ああ、そんな気はする。でも、このゲームなら一度はやったことくらいあるだろ?」
俺が指をさしたのは、ゲームセンターに行ったら必ず一台は置かれているだろう、太鼓をバチで叩くリズムゲームだ。幸い、今は誰もやっておらず、並ばずにすぐ出来そうだった。
「うーん……やったことないなあ」
「……マジで?」
衝撃の事実。誰しも一回はやったことがあると思っていただけに、派手に驚いてしまった。
「……面白い?」
樹里さんが尋ねる。
「……リズム感があれば、楽しいかな」
「……そうじゃなくて、本郷くん的にはどうですか?」
数秒の沈黙。意図せず俺は、彼女に見つめられる形になる。
「……俺は好きだよ」
何が、の部分を言わなかったせいで、変に誤解されそうな言葉になる。しかし、彼女は俺が省略した部分をくみ取って「それなら、やってみたいです」と笑いかけてくれた。彼女はとても聡明で、何か間違えてしまうこともほとんどない人だったから。
「そっか」と俺は笑う。彼女のイメージしている「俺らしさ」を意識しながら。
「じゃあ簡単とかでいいからさ、やろうぜ」
百円硬貨を入れながら、俺はくるりと樹里さんに振り返った。
「……嘘だろ」
思わず声がもれる。
最初の一回は、あらかじめ彼女が断っていたとおり、まさに初心者の動きで、譜面を追うので精一杯のように見えた。といっても所詮は「簡単」の難易度だったから、ノルマクリアは出来ていたわけだけれど。だから俺は油断していた。樹里さんでも出来ないことがあるんだと少し微笑ましく思っていたくらいだった。
次の曲を選択した時、一度やったことでコツを掴んだのか、彼女は難易度で「難しい」を選択し、隣の俺を驚かせた。よっぽど俺が変な顔をしていたのか、俺の視線に気付いた彼女は照れたように笑い「もし失敗しても、笑わないでくださいね」と小声で言った。笑うなんてとんでもない。いやね、俺が言いたいのはそれじゃないんだ。樹里さん、このゲーム人生二回目なんでしょ? いきなりハードル上げすぎじゃない?
他にも言いたいことは色々あったはずなのに、俺は結局何も言えなかった。それに、もし言えたとしても、すでにスタンバイしてしまっているから、今さら変更なんて出来ない。悲惨な結果になっても知らないよと思いながら、俺は次の曲のイントロが始まると同時に画面に集中した。
ゲーム中も、なんとなく違和感はあった。視界の端に映る彼女の太鼓の叩き方は、明らかに一回目のそれとは違っていて見えたから。
ゲームが終わって表示された結果発表を見て、俺は腰が抜けるかと思った。同じく「難しい」を選んでいた俺とはほとんどダブルスコア。内容を見てみれば、良ばかりの見事なフルコンボ。見間違いかと思った。
ほとんど間をおかずに始めた次の曲でも、彼女は「難しい」を選択し、同じようにフルコンボを叩き出していた。一体、彼女の飲みこみの速さはどうなっているのだろうか。
「隠れた才能じゃん……すげえなあ」
素直に感心してしまう。横目で見ることしか出来なかった俺でも、彼女のリズム感の凄さは肌に感じた。今日が初めてだなんてとても思えない。画面上の太鼓のマスコットキャラクターも、心なしか普段よりも微笑んでいる気がする。いつの間に来ていたのか、美羽と達也くんも後ろで彼女がゲームする様子を見ていたらしく、凄いと二人で盛り上がっていた。仲が良いようでとてもいいと思う。
今ので百円分を全て消費したので、いつの間にかゲーム画面は最初のオープニングに切り替わっていた。ゲーム機から少し離れた場所に移り、四人で輪を囲むようにして立ち並ぶ。
陽気な電子音の中で、しばらく誰かが話すのを全員が待つ謎の沈黙の時間が続いた。そこで俺が先陣を切ってやろうと思い、「樹里さん、楽しかった?」と彼女に話題を振ってみた。反応は大方予想がついていたけれど。
「はい、ありがとうございます本郷くん! もし今日来ていなかったら、一生経験しなかったと思います!」
一生は流石に言い過ぎじゃないかなと思う。おそらく俺が今日誘わなくても、いつかは誰かに誘われてやるんじゃないかなあと思ったけど、口にはしなかった。好意はありがたくもらっておこうと思う。
それにしても、こんなにテンションの高い樹里さんを見たのは初めてかもしれない。今まであまり関わりがなかったとはいえ、学校での彼女のイメージとは随分かけ離れていると思う。たかがゲーム機で(というと言い方は悪いが)ここまではしゃぐ彼女は、とても新鮮で、何となく見ることが出来て得した気分になった。
「友達に自慢すれば? 尊敬されるかもよ」
俺が提案すると、彼女は困ったように眉をよせた。
「うーん……私の友達は、こういうタイプのゲームはやらないと思うから……」
「ああ……」
納得してしまった。彼女自身もそうだが、確かに彼女とよくいる女子たちも、ゲームをするような風には見えなかったことを思い出す。
「んー……じゃあ次は何する?」
「――あの、やりたいものがあるんですけど」
今まで沈黙を貫いていた達也くんが、おずおずと手を挙げて口を開いた。
「え、達也、何かやりたいものあるの? 何なに?」
美羽が期待の目で達也くんを見ていた。一度照れたように笑った達也くんが、ゲームセンターのある場所を指さした。
「今日の思い出として、記念に残したいんです」
達也くんが指さしたのは、色白の女子たちが表面にプリントされた機械が立ち並ぶプリクラコーナーだった。
一瞬だけ、思考が止まった。
なんだか今日は、ずっと高梨家に振り回されてばっかりだ。
週末はすぐに終わり、いよいよ月曜の今日からテスト本番だった。ゲーセンから帰宅してからは、彼女から聞いた教科ごとの対策を元に単語帳を暗記したりワークの問題をひたすら解いたりして、土曜日の穴埋めをするかの如くテスト勉強をしていた。俺にしては珍しいその集中っぷりに、両親が感心を通り越してどこかで頭をぶつけたんじゃないかと引いていたことはしばらく忘れないと思う。
若干の寝不足のまま、普段よりも早く教室に入ると、クラスメイトが三者三様の表情をしていて、そんな場合じゃないのに面白いなと思ってしまった。一時間目が始まる前の十分間を、最後のあがきに単語帳を見る時間にあてていると、友達が俺の席に近づいて話しかけてきた。
「なあ柊羽、お前土曜にゲーセンいなかったか?」
一瞬、ドキリとした。しかしすぐに平静を取り戻して、俺はからかうような態度を取る。
「……お前、テスト週間なのにゲーセンいたのか? 勉強しろよ」
「それをお前が言うか? で、実際いたのかよ」
「まあ、妹の付き添いだけど。つーか、いたなら声かけてくれてもいいのに」
「いや、俺がいたわけじゃないんだが……なんかそこに、高梨さんっぽい人もいたって他の奴から聞いてさ。柊羽は見たか?」
「……さあ、あんまり周りを気にしてなかったからなあ」
「仮にもテスト期間なんだから、先生に見つかったらどうしようとかは考えて気にしろよ」
「それはそうだな」
ひとしきり笑って満足したのか、友達は自分の席に戻っていった。自分自身で見ていないから、樹里さんがいたという話そのものの信憑性の方が疑わしいと判断したのだろう。
――見られていたのか。でもまあ、わざわざ本当のことを言うこともないし、いいか。
再び単語帳へと目を移す。ほとんど使ったことがなかったので、俺の持つ単語帳はページが折れていたりくしゃくしゃに歪んでいたりもしていない。差し込まれている赤シートも新品に近い輝きを維持していた。
――たかが一緒にゲーセンに行っただけで、浮かれているんじゃないか?
赤シートの反射で映った俺の顔が、そうあざ笑って歪んでいるように見えた。
「兄ちゃん見て! これ!」
テスト初日が終わり家に帰ってくると、俺の帰りを待っていたと言わんばかりに、美羽が八十四点のテストを自慢げにひらつかせてこちらに歩みよってきた。鞄を床に置いてソファーに腰かける。正直、テスト中にテストの話なんて聞きたくなかったのだが、目の前の美羽が話したそうな様子だったので、仕方なく話に付き合うことにした。
「……この前の勉強会の成果か?」
何日か前、俺と美羽の部屋に達也くんが来て勉強会を開いていた。その時教わっていた範囲のテストが、どうやら今日返されたらしい。
そういえば、あの勉強会があった時に、達也くんの名字が「高梨」だって知って驚いたんだっけか。ついこの間のことなのに、随分昔の出来事に思えて、なんだか懐かしい気がした。
「うん、そう! さすがじゃない?」
「おー、そうだな。さすが樹里さんの弟だけある。やっぱ姉弟そろって頭いいんだな」
「ていやっ!」
突如美羽のチョップが俺の頭上で炸裂した。
「何すんだコラ!」
「……それ、達也の前では言うなよ。樹里さんも頭がよくて凄いのは、兄ちゃんとか達也から聞いて知ってるけどさ、比べると達也が気にするんだよ」
サイドテールを揺らす美羽は、珍しく真剣な表情をしている。
「……達也くんが言ってたのか?」
「いや? でも達也、結構気にしてると思う。賭けてもいいよ」
「賭けんでいい。……でも、そうか。悪いな。気いつけるわ」
俺が思っているより、美羽は色々考えているらしい。
「……八十四点か。勝ったな」
俺なんか、目の前の美羽の点数にしか気を取られていないというのに。
「は?」
「俺の最高得点は八十五点だ。悪いな美羽、俺の方が天才だったみたいだ」
「そんなに変わんねえ!」
強烈なツッコミをした美羽だったが、ふと真面目な顔になって何やら考え込み始めた。なんだか嫌な予感がする。
「でも待てよ? じゃあ、次は八十五点以上取れば兄ちゃんより頭がいいってことになるよな……? また達也に教えてもらおっかなあ……」
俺の予想通り、美羽はとんでもないことを口にしていた。兄の威厳の危機だ。慌てて俺も対抗してしまい、さらにとんでもないことを口にしてしまった。
「じゃあ、俺は樹里さんに教えてもらおうかな。そしたら平等だろ」
「え、マジで? 兄妹そろって高梨家に勉強教えてもらうってどうなの……」
美羽が何か言いたげにこちらを見ていた。しかしそのことを心配するのはもう遅い。小学生時代の俺は、高梨家の長女に勉強を教わった過去があるのだから。
「へえ、そうなのか。じゃあ、その八十五点ってテスト、樹里さんに教えてもらった時の点なんだな」
それを教えると、美羽は俺の不自然な高得点の理由に納得したようにうなずいた。すぐに見破るあたり、美羽は俺、いや俺たちのことをよく分かっている。俺たちの頭では、そんな高得点は取れるわけがない。それこそ、誰かに勉強を教えてもらわない限りは。
「そゆこと」
「……あれ、じゃあ小学校の時は仲がよかったってことだよな? 勉強教えてくれたくらいだし。ゲーセンの時とか、全然そんな風に見えなかったけど」
……本当に、美羽は俺が思っているより色々考えているらしい。痛いところをつかれる。
「別に仲は良くねえよ。ただ、あの時はテストで七十点以上取らないと放課後に居残りだったから、クラスで一番頭のよかった彼女に勉強を教えてもらってたんだ。それ以上は何もねえし、何ならゲーセンに行くまでほとんど話もしなかったし」
「……へー、じゃあさ」
まっすぐな目をして美羽は俺に尋ねた。
「兄ちゃんってさ、樹里さんのこと好きなのか?」
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