Chapter2.

序②

 ………………。


 ……………………………………。


 ねえ、どうして?


 どうして、お父さんとお母さんは眠っているの?


 ねえ、答えてよ。


 どうして、なんで、なんで息をしないの?


 なんで冷たいの?


 なんで目を開けたまま寝ているの?


 ねえなんで、嘘だよ。そんなのありえないよ。僕はまだお父さん達と過ごしたいのに。


 お父さんとお母さんが動かないなんて……そんなの嫌だよ。





 足音に気がついて、振り向く。

 そこに立っていたのは、もう一人のお父さん。


 え、なんで?お父さんが二人?


 わからないわからないわからないわからない、どっちが本物?どっちが偽物?わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない。


「心配をかけたな」


 そう言って、お父さんは僕の頬に触れた。

 いつもの、ゴツゴツした頼もしい手ではなく、デスクワークでもした後のような冷たい感触だった。


 お父さんは話を続ける。


「そうだ、それでいい。落ち着くんだ…………」


 そう言って、お父さんは…………。


「もうどちらでもいいだろう。私が誰かなんて」


「なんで……?」


 掠れた声で、僕はそう答えた……と、思う、多分。きっと。



もういい・・・・もういい・・・・んだよ、陽太ようた……」


「これからは……君もこちら側だ」


 お父さんの目を見た。

 お父さんの目じゃない。

 お父さんの目じゃない…………でも、数秒後にはどうでもよくなった。


 だって、もう、その時僕は僕じゃないんだもん。



「……よし、いい子だ」




「おはよう、目が覚めたかな?」

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