夕陽が見えたので。

 夕陽は、意外と多彩な顔を、持っています。燃えるような、真っ赤な顔の日もあれば、雲や霧で、ちょっと霞んだ表情も見せます。そもそも、中々顔を出してくれない日も、多いですね。


 今日は幸い、彼が顔を出してくれています。とても紅いです。昼間はよく晴れていて、黄色い顔をしていたはずなのですが、夕方までに、一体何があったのでしょうか。誰かに怒っているから紅くなってしまったのでしょうか。それとも、何かとても恥ずかしいことがあったので、こんな顔をしているのでしょうか。だとしたら、明日は顔を出せないですね。明日は曇りです。


 夕陽は少しずつ、森の中に、落ちていきます。紅い彼の顔は、彼を見つめる雲たちの顔まで茜色に染め上げていましたが、彼が森に帰る頃になると、それも段々と色褪せ、青くなり、やがて完全に彼の顔が見えなくなると、白っぽくなりました。白い、といっても、彼が紅くなる前の白とも違う、なんだか灰色に近い、別の白です。雲たちも彼の顔を見て、何か思うところが、あったのでしょうか、違う顔を見せてくれました。


 沈んでからも、私はずっと空を、眺めていました。初めのうちは、ちらちらと星が瞬いていました。彼がいた頃には見えなかったものです。ですが、段々と、見えなくなりました。雲が多くなってきたためです。やがて、一層暗い顔になった雲に、星々は覆われてしまいました。星たちは、彼以上にシャイですね。顔を見せてくれたのは、ほんのわずかな間でした。


 そして、ポツポツと雨。泣いているのでしょうか。きっと昼間に嫌なことがあったんですね。それが雲たちにも伝わり、もらい泣きしてしまったのでしょう。


 これは、明日まで続くと思います。悲しいときは、お休みしたくなるものです。心が疲れてしまうのです。だからお休みしましょう。疲れが取れるまで。ちょっと大泣きしたくらい、なんだっていうんですか。一緒に泣いてくれる人も、いるじゃないですか。あなたは一人じゃない。仲間がいるんです。だから休みましょう、泣きましょう。誰かが、手助けしてくれます。


 私も、昼間に大きな失敗をして、ちょうど心が疲れてしまったので、明日は休みます。と電話をしたら、上司に怒られました。


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