第九楽章

 彼が戦場に赴いてから、私は自宅を改装した。空いていた部屋を防音室にして、ピアノを置いた。キキョウとの約束を守るために。久しぶりに弾いたピアノの腕はすっかり衰えていたが、それでも仕事の合間を縫って練習を続けた。そんな折、ネモの開発が終了し、実戦配備される日が来た。

「配備状況は?」

「完了してます。Typeネモ、100機が既にスタンバイしています」

「よろしい。では、Typeネモの指揮権を現地司令部に譲渡。いつでも始められると伝えて」

 了解、という短い返答とともにジョエルが司令部に通達する。私たちはモニターに映されたアンドロイド兵士が動き出すのを今か今かと見守る。

「司令部からGoサインが出たようです。全機、起動します」

 その声と同時にモニターの中のアンドロイド兵士たちが一斉に起動した。各々が受けた指令の元、行動を開始する。ラボでは歓声が上がった。

 数十分後、戦場はいとも容易く制圧された。機械仕掛けの兵士の突然の登場に相手側の兵士が面食らったことも勝因の一つだろう。

「こちらの損耗を伝えて」

「全機健在。損耗はありません!」

 圧勝、ということらしい。それは間違いなく、戦争の姿が変わった瞬間だった。

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