第二楽章

「アンドロイドと言うと、最近家庭用のものが普及され始めた、あれですか?」

ハウエバー氏の問いに私は頷く。

「そうです。現在では簡単な家事を代わりにしてくれる物というのが一般的なアンドロイドのイメージですが、私たちは家事ではなく、戦闘をするアンドロイドを造っています」

 彼は信じられないといった表情で首を振る。

「それが何を意味するかあなたは分かっているのですか?」

「理解はしているつもりです。私たちが造ろうとしているのはいわゆるところの殺人マシーンであり、これを完成させるということは間接的に多くの人間を殺すことになるのだ、と」

「そこまで分かっているのなら、どうして!」

 彼の発した大きな声にビクリと肩を震わせながら、私は言葉を返す。

「そ、それは……、せ、戦場で生きてきた、あぁ、あなたになら、分かるのではないですか……?」

 私の返答にハウエバー氏は怪訝そうな顔をする。私は続けた。

「あなたは、先ほど仰いました。『自分はこういう風にしか生きられない』と。私も似たようなものです。私も、『こういうものを造ること』にしか、才能を活かせない」

「そんなわけがない。僕が傭兵として生きているのは、他に選択肢がなかったからで、あなたには……」

「確かに、いくつか選択肢があったのは事実です。しかし、そのどれにおいても、私の能力は活かしきれませんでした。唯一、兵器の開発を除いては」

「しかし、それではあまりにも……」

「あまりにも、何ですか?私は才能がある者がその才能を使わずに腐らせてしまうのは罪だと考えています。その持論に従っているだけです」

 うつむき黙り込む彼を見て、私は我に返った。そうだ。ここは持論を展開する場所ではなかった。もしこれで彼が今回のオファーを断ってしまったら……。

「すいません……」

 私の突然の謝罪にハウエバー氏は顔を上げた。

「今は、ビジネスの話をしているのでした。私、それをすっかり忘れて、あなたを言い負かそうとしてしまいました……」

 それを聞いた彼は慌てて、

「いや、あなたは悪くない!聞いたのは僕なんですから。こちらこそ謝らなくては。あなたはもっと、自分の意見というものが希薄そうに見えたものですから。しっかりした持論を持っているのが意外に思えてしまって」

 とにかく、と彼は姿勢を正して、

「詳しい話を聞かせていただけますか?そのアンドロイド兵士について」

 と真っ直ぐに私に目を見て言った。

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