今日の三題噺:「海」「いけにえ」「ねじれた才能」

 ジャンルは「邪道ファンタジー」だよ。頑張ってね!


 なんだよ邪道ファンタジーって……




 曇り空の日本海の海岸沿い。

 鈍色の空には遠雷が響き、冬の足音が確かに聞こえてきている。

 

 冬の日本海、秋田の海には神がいる。

 それは荒ぶる神であり、古くは生贄を捧げては荒神の力を抑えてきたという。

 しかし昨今は生贄を捧げる風習もすたれ、村にはただその昔の逸話だけが伝わっている。

 生贄を捧げなくなって荒神はどうなったのか。

 吹きすさぶ嵐のように怒り狂い、漁船や飛行機が落ちたりしたかと思ったかもしれないが、さもありなん。

 今は荒ぶる神を抑える一人の祭司がいる。

 祭司は神をどのように抑えているのか。

 

 荒神は一説には細長い紐のような形であったと伝わっている。

 力ずくでそれを捻じり、∞の形を取らせる事で荒神は永遠の空間の中を彷徨う事となった。

 超ひも理論とか、なんかそう言う訳らしいけど詳しい理論はよくわがんね。

 とにかく無限の力、螺旋の領域に神を封じ込める事で荒神の吹き荒れる力は収まったと聞く。だいたい神代の時代の話だったらしいよ。


 それで、最近は無限の力が弱まって来たというから、それを再度封じ込める為に祭司の残した捻じり方が必要になった。

 というわけで祭司の子孫、血筋らしいと謳われる俺が残された書物を読みあがる。

 なんで古代の書物を俺が読めるのか、それは大体読めるように教育されたからだ。こんなもんクソの役にも立たないかと思っていたが、このような事態が訪れるとは全く俺の先祖の読みは正しい。

 紐というか糸みたいに細いからまず紙縒りのようにまとめ上げ、一つの紐を作る。

 そして紐を∞の形にし、縛り上げて空に投げる事でメビウス的空間が出来上がり、封印領域が出来るという。


 まずどうやって神を紙縒りにまとめ上げて紐になんかできるかってんだ。


 いくら俺が子孫とはいえ、そんな神通力が宿っているかというと、もうそんなものは流石に血が薄まりすぎて残っていない。

 高次元の存在である神を掴み取るなど、それこそ笑い話だ。


 と思っていたが試しにやってみたら出来てしまった。


 神は長年の封印によってその力が弱まっていたから簡単にほどけた糸を紙縒りにし直して紐に仕立ててやった。

 というか、もう力が無いなら封印する必要もないのでは?

 そう思ったからおれは荒神の紐をブレスレットに仕立ててやった。

 神のブレスレットは時々風を起こし、扇風機代わりの風が心地よい。

 

 ただ、冬になるとその風が少々冷たくて肌寒い。

 だから今の季節は机の中にしまい込んでいる。

 また暑くなりはじめたら、机から出してやろう。荒神の腕輪。

 

 

 

 

 

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