三題噺:船室、犬、摘まむ
荒れ狂う日本海。
任務で俺は船に今日も乗っている。
何の任務かはそりゃ極秘だから言えないが、少なくとも国の一大事にならないように未然に色々防ぐのを目的に動いているとだけは言えるだろう。
詳しくは小林源文先生のOMEGA7を読め。
だいたいそんなところだ。
ところで、何故かこの船には犬が紛れ込んでいた。
どこからいつ入り込んだのか全く不明で雑種だが、人懐っこさだけはあって船員の誰にでも尻尾を振る。
頭は賢くないようで馬鹿犬と言っても仕方ないくらいの知性の無さだが、この人好きな面があってか船の中では既にマスコット的な位置づけを築いていた。
当然、船員の部屋の中にも乗り込んでくる。
撫でろ、エサをよこせと言っては周りをぐるぐるぐるぐる回っているものだから、人はつい根負けしてしまう。
こんなクソ狭くてストレスのたまる環境で、動物の存在という物は存外有難いものだと気づかされるものだ。
しかし、俺は今日ほどその愛らしい存在を憎らしいと思った事は無い。
日々の任務が終わり、ようやく部屋に戻ってゆっくりくつろごうと思った瞬間に俺は異臭に襲われて鼻を摘まんだ。
俺のベッドの上に、クソが鎮座してやがった。
ご丁寧に小便までもシーツにされている。
とてもじゃないが今日は、いや明日もこの部屋で寝れるかどうかわからない。
折角個室を割り当ててもらっているのに、一人で寝るという贅沢が享受できないのはムカつくのを通り越して唖然としてしまった。
そしてクソを垂れた当の本人は、ベッドの横で能天気に舌を出して笑っている。
俺はお前に何か気に入らない事でもしたか?
俺も犬は嫌いじゃないので、それなりに世話をしていたはずだが恩を仇で返されるような真似はしていないはずだ。
「ジャック、お前何してくれてんだ」
俺の声に、雑種のジャックはばう、と返事をするだけだった。
怒っているのは伝わっているのかいないのかよくわからない。
そして船がひときわ大きく揺れると、ジャックは更にとんでもない事をしでかす。
おげーーーーーーーーーっ
「うわっ!」
クソと小便の次はゲロかよ!
しかも俺が隠しておいたつまみの中身が吐瀉物の中にちらほら見える。
何時の間に嗅ぎ付けてやがった、この馬鹿犬!
流石の俺もジャックを蹴りだし、汚れた布団を仕方なく洗い場に持っていき、さらにゲロで汚れた床を掃除するという夜を送る羽目になった。
あの馬鹿犬、陸に降りたら嫌と言うほど運動につき合わせてやるからな……。
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