第20話

「マコト・ヒロセに会いに来ました。会えば、俺が何をしに来たのかはわかるはずです」

受付について、ベテランの看護師に一言そう言った。すぐに返事が返ってくる。

「ドクターからですね。小児患者入院棟はわかりますか?」

キョウヤのよく知る場所だ。この病院の、さっきとは反対側。彼らがどうしてここにいるのかを考えると、今になっても心が濁る。キョウヤが一度ここに入った時にも、ギリギリ小児の段階だったからそこにいた。全身がチクリと痛む。ベテランの看護師も分かっていて言ったのだ。お前に、真実を知る覚悟と意志はきちんとあるのだな。

――あるに、決まっている。そうでなければ。

頷いたキョウヤに、ベテラン看護師は少し微笑んで言った。

「一階の一番離れた場所に倉庫があります。その壁の奥に、はいますよ、サキオカくん」

「ありがとう。助かります」

キョウヤも笑って返事をして、まっすぐに小児棟に向かって歩き出した。


急ぎ足だった上に、誰ともすれ違わなかったので、あっという間に言われた通りの場所にたどりついてしまった。倉庫に鍵はかかっていなかった。中を見ると、様々なものが並んでは。

「やはり、ダミーの部屋なのか……」

何もない部屋だった。ベッドすらない。電灯もない。床と、壁と、天井だけの部屋。場所が場所なためにかくれんぼにはうってつけの部屋だが、そういう健康的な子供はここには入れない。そういうものだ。奥の壁をノックしてみたが、反応はない。携帯電話のライトを点けて壁を確かめて、すぐに隙間が空いていることに気が付いた。どうやらこの壁は取っ手がないだけで、ただのドアであるらしい、隙間に手を伸ばしてみると、微かに風が吹いているのが分かった。建物の形状から考えると無理のあるつくりだが、相手が相手だ。多少の物理法則など妖怪たちと同様に無視してくるに決まっている。

「失礼します、マコト・ヒロセ博士。俺は香也・サキオカと言います」

名乗りながら、壁に手をついて力を入れる。簡単に、壁は動いて、中の景色が見えてきた。

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