第17話
悩んでいても仕方がないと、チサは歩き出した。歩き出したはいいものの、とても心細い。確かに普段と比較して弱体化しているせいもある。チサ本人は、そのせいだけでこんなにも心細いのだと思っているほどだ。しかし、本能的にはそれだけではない。
キョウヤが、隣にいない。
普段から、ずっと一緒にいる。一緒に暮らしているし、ほとんどの場合一緒に食事を取るし、恋人だと疑われたことも何度もある。実際のところはそうではなく、ただの
共犯者だ。共に殺し、敵をまとい、そして殺す仲間。どちらが悪なのかさえも分からぬまま、共に走った共犯者。それだけだという風に、チサは認識していたが、いつしかチサの中でのキョウヤは非常に重要なポジションに立っていた。
味覚を失った今になってしまっても、二人での食事は美味しい。生活の中で、いないと不自然に感じる。そこまでの存在に、キョウヤはなっていた。それどころではないという意識が、余計にその潜在意識を深めていく。自覚のないままに。
「落ち着くのよ、私。闇が何だっていうのよ」
星明りがないとキョウヤは歩けないが、チサは完全な闇の中でも問題なく見る手段が備わっている。その目でじっと周囲を捉えても、袋小路から出ているということがわかるだけで、変化は何もなかった。平坦な床と、高い天井と、平坦な壁。長い長い筒の中を、ひたすらまっすぐ歩いている。落ち着かないが、出るしかない。きっとキョウヤが、危ない目にあってしまうから。
「私がいなきゃ、何にも、なーんにもできないんだから。アイツは、しようとしないんだから」
何度も自分に言い聞かせて、自分を奮い立たせる。少しでも、歩くために、少しでも、前に進むために。
そうするうちに、少しだけ疲れてきた。弱体化しているせいだと思ったが、それだけではなく、足の力が少しずつ抜けてくる。どうやら、体に移植した妖怪の部分が暴走しているらしい。……よくない。できれば、薬が必要なところだ。
「さて、どうする?
幻聴まで聞こえてきた。
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