第13話
「まずは大前提としてだが、君は、千紗のことを見たのか?」
ドクターの質問に対して、キョウヤは首を横に振った。どこからがブラッディの仕業かも、どこまでがチサがやってしまったことなのかも、キョウヤにはさっぱりわからなかった。
「やはりそうだろうと思っていたよ。だから、こちらで調べた限りの資料を用意しておいた。君が、たっぷり寝ていたおかげで準備する時間は多かったからね」
監視カメラの動画をまとめたファイルが、キョウヤの携帯に転送された。
はじめに起こったことは、チサの監視をしていた職員たちが目撃した。拘束具を駄菓子みたいに破壊して、チサに発砲を試みた職員の腕をバクリと食べて、他の攻撃はかわすか、職員を突きとばすかで対処している。その後、チサはブラッディのように姿を消して、職員たちは支部長へ連絡をする。
「この時点で本部に連絡を入れていれば、何人か生存者はいたかもしれないのが、次回に生かすべきところだな」
次の動画は、ブラッディが正面玄関から現れる瞬間が収められた監視カメラの映像だ。真っすぐに正面玄関から現れて、職員たちが不審人物へ対処するようへ対処すると、肉体がぶくぶくと膨れ上がって弾け飛んだ。床や血に飛び散った人間の肉体を見たブラッディはほんの数秒だけとても嬉しそうな顔を浮かべて、職員だったものの所有物である拳銃を奪い取ると、次の犠牲者へと走っていった。その後は、何人もの人間が裂かれ、ちぎられ、まき散らされの連続だ。
最後に、支部長の叫びが聞こえる。
「強力な妖怪の襲撃を受けている!何とか持ちこたえるつもりだが、敵は強すぎる!至急救援が欲しい!繰り返す!千葉県支部長から本部!」
そして動画は終わった。支部長からチサについての言及はないようだが当然だろう。チサは、本部の期待の星だ。彼女の移植率は断トツだ。あそこまで移植しても戦える、生きていられるということは、医療目的に妖怪の体を移植できるようになるかもしれない。目をかけないはずがない。だが、それ以上に気になることがあった。
「ブラッディに最初に出くわしてしまったのが戦闘経験の浅い者だった。そこで気が付いて逃げるべきだったんだ。命を無暗に散らしてしまうのは、医者としてとても悲しいよ」
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