第12話 角砂糖

 華子は、机の上に置いたコップにはいった角砂糖を摘まむと、コロンと口のなかに転がした。

「華子、もうやめなさいって角砂糖を食べるのは」

あきれながら華子に伝えると、華子は不機嫌な子供みたいに方眉を上げて

「いいじゃない」

と言った。

「いいけど──それで、なんだっけ──あ、星野くんのこと、単刀直入に聞くけど、絶対好きにならないの?好きっていったじゃない」

華子は、華子のことをあなた、と呼ぶ星野くんが好きだったのではなかったのか。

「そうだったけど.......」

「期待されたっていいじゃない。どうして嫌いになったのかわからないわ。星野くんがかわいそうよ」

華子が、星野くんと関係を持っていることを知ったときは嫌な気持ちになったのに、いざふったと聞くと、間違った判断だと感じるのは我ながら勝手だとは思ったが、香織はつづけた。

「あの人は、あなたのことが好きだよ」

「......そうかもね。だけど、どうして香織が星野さんを応援するの?」

華子は、困ったようにうつむいて静かに言った。

「それは......」

香織は、答えに詰まった。確かに、どうして星野くんを応援しようと思うのだろうか。星野くんのことは香織には関係ないのに。ほんとに、これっぽっちも。

「ねぇ、角砂糖もう1ついただくわね」

華子の問いに、うなずきながら、紅茶を飲むと、下にこぞんだ砂糖が口のなかで、ザリザリと不快な音をたてた。

「ちゃんと混ぜればよかった」

「そう?はじめから入れれなければいいのよ。角砂糖は食べやすいような形なんだから」

華子は、角砂糖を美味しそうに口のなかで転がしながら言った。

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