第1話 魚人襲来


「まさきー、宿題みせてーーーー」

やたら語尾が長くだるそうな海原晴矢は毎日毎日宿題みせてーーーーーーと頼んでくる。ちなみに晴矢はすごくイケメンだ。羨ましい


「俺がやってると思うか?」


もちろん、やっているわけがない。


「思わん。まさきがやるわけないもん。

宿題やってないよなってゆう確認や」


なるほど。

じゃあ、明日はやろうかな、と思った途端

「まさき、今、明日宿題しよかなとかおもったやろ。やるなよ、なぁ…やるなよ」と焦りながら言った。


心を読まれた。俺って顔に出やすいタイプの人なのかと思いつつ「わかってるって」と答えた。


はるやはウィ〜〜と困ったら言えばいい言葉ランキングの上位に入るであろう言葉を吐き捨て永井梨花の所へ駆けつけていった。

永井梨花は可愛く、ショートで、性格も良い。男女からとても人気のある女性だ。あと、少し抜けているところもあって、そこが良いととてもモテている。俺は好きではない……ない


「りかー、昨日のしゃべくり見た?」


「見た見た!山崎賢人かっこよかったーー」

はるやは何故が嫌そうな顔をした。




ガラガラガラ…

八代先生が入ってきた。今日も相変わらずがたいがでかい。

「おーし、すわれー」

皆、ぞろぞろと席についている。最後についたのは、いわゆるヤンキーの松原一星。黒髪のイケメンだ。


「今日は3限目に避難訓練があるからな、しっかり訓練するように」


「めんどくせぇぇ」

そう言ったのは谷町智也、松原グループの一員だ。金髪で目が細くピアスを開けている。

松原グループには一星と智也の他に橋本新、鍵田旬の4人グループだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ピンポンパンポーーン」

3時間目が来た。1、2時間目は寝ていたので、まだすごく眠い。この放送は多分避難訓練の指示だろう。


………

……

「なんもゆわんのかい!」

晴矢が大きく手を机に叩きつけ、大きな声でツッコンだ。はははと少しの笑い声がうまれた。

あまり面白くなかったらしい。


俺は「ツッコミが初歩的やねん」と笑いながら

晴矢に言った。

晴矢は「じゃあお前ツッコンデみろよ」と眉を寄せ目を細くし俺に言って来た。

いつもなら軽くあしらうがおもしろいのを思いついたので

「任せろ」と言った。

「早く」


「いくぞ」

「えらいためるな」


「んんっ……それっ」プツッ

言おうとしたら、スピーカーから音が出る予兆のプツッが聞こえた。


……


「……学校に不審者が!!早く逃げろ!はや………」


………

……


「演技うまぁ!」俺は思わず叫んでしまった。

昨日地震が起こった際に適切な判断ができるよう避難訓練をするって言ってたはずだったのに。


「いきなり訓練の内容変えてくるなんか、うちの先生もおもろいなぁ」

教室がいつも以上にざわざわしていた。いつも冷静で静かな生徒も戸惑っている。


「まさき、、」


「うん?」





「今、、2時間目」


「は?」

最悪の場合が脳裏によぎったが、自分を落ち着かせるために晴矢に聞いた。


「先生の連絡ミスやんな」


「そうかも知らんけど、前の手紙にも3時間目、避難訓練って書いててん…」

寒気がした。手紙の情報が間違っているなんてほとんどないからだ。


晴矢は続けて言った。

「しかも先生の様子もちょっとおかしかったし…」


「確かに、でも演技じゃないんかな」

半分びびりながら答えた。



バンッ!机を叩く音だ。


「不審者なんか俺らがぶっ殺したるわ!!

はっはっははははは」

智也が調子に乗って何か言っている。

「そうやな、ぶっ殺そ」と、顔を智也に向け新が答える。

「ねむ」旬が目をこすりながら言う。今まで寝ていたらしい。

それらを聞いた一星が

「お前らちょっと黙っとけ。ほんまにきとったら、どうせなんもできへんやろ。」と呆れた口調で言った。


「……」

(図星なんかい)


ヤンキーは怖いからとここでしらけるのは嫌だったので心の中でツッコミを入れてみた。


それから数十秒沈黙が続いた。







タッタッタッ

いきなり学級委員長の指原詩織が教卓の前に来た。まだ科学の先生が来ていないからこの状況をまとめようとしてくれてるのかもしれない。


「指原さん、どうしたの?」

詩織が質問をする。



……

「み、みられ、、見られてるから」





全く理解できなかった。ざわざわしていた教室も一瞬、葬式のように静まり返る。

俺は時計の針が動く音を初めて聞いた。


「どうゆうこと?」

震えた声で梨花が聞いた。


「あの席じゃ、、見られてるから」

委員長の目には涙が滝のように出ている。


委員長の席は廊下側の前から4番目だ。


「その、、放送であった、不審者ですか」

俺は直球で聞いてみた。


「そう、かも」




俺の首筋は冷や汗でいっぱいになった。今の教室はカイジ3倍分のざわざわ加減だ。



不審者のことで頭がいっぱいになり、気の弱い夜長はじめが俺の背中をつんつんとつついていることに気づいてなかった。はじめは高校生とは思えぬぐらい幼い容姿をしている。


「ん?どうした?」


特に喋るような仲ではなかったので、驚いた。


「まさきくん、、運動場見て、」

「いま?、、、なんで?」


「僕の目がおかしいかもしれないから…」


何言っているのかさっぱりわからなかったが、顔を見て窓に向け、カーテンの隙間から運動場を見てみた。


広い運動場を左から右へとゆっくり何かを探すように見ていった。





「ッッッ……」

言葉が出なかった。



少し時間を開けて俺ははじめに聞いた。

「なに、、、あれ、、コスプレ?」


「わからない、、」

目に涙をためて、はじめは答えた。



運動場の右端、校庭と繋がる渡り廊下のような場所に、全身が青く、体長は2、3メートルぐらいで、銛を持った"怪物"が立っていた。

いや、怪物と言うよりはアニメや漫画で出てくるような"魚人"と言う表現のほうが正しいのかもしれない。


「じゃあ、委員長が見たのって、、」



「うわっっ!」智也が突然叫んだ。

「ともや!?」梨花も驚き叫ぶ。

智也は慌てて教室を飛び出し、階段の方へ走っていった。

智也は叫ぶ前、廊下側の窓から廊下を覗き込むように見ていたらしい。


(もしかして、"アレ"をみたんじゃ)



ビュンッッ


突然、廊下にとてつもなく速い何かが通った…


「ガハッ……ぐあぁぁぁーー!!!!」


智也の悲鳴が2年生の教室が並ぶ廊下中に鳴り響いた。


「きゃーー!!」女子達が一斉に騒ぎ始め、教室はパニック状態に陥る。


「落ち着け!」一星が叫ぶ。教室が静まる気配は全くない。まぁ、無理やろ。普通に、今、落ち着くとか。そんなこと思いながら、震える足を押さえつけていた。


「とりあえず、廊下から逃げるのは絶対にあかん!」

珍しく晴矢が頭を使って喋っている。しかし、それくらいはみんな知っている、、と思う。


晴矢の発言から間髪入れずに梨花が言った。

「そんなんわかってるよ!」

…やっぱり


ここで、何か忘れているような気持ちになった。




あ、そういえば魚人って…



チラッ


……


「ぎぃぃやぁぁぁぁぁ」俺は思わず叫んでしまった。

後ろのドアの隙間から俺たちを覗いてる魚人と目があったと同時に皆の目線も俺に集まっていることがわかった。


「ギィィィィィ!!」

魚人は俺の声にびっくりしたのかドアを壊し教室の中に入ってきた。


「やばいやばいやばいやばいやばい」

語彙力のない言葉を連呼せざるを得なかった。



「助けて、、、まだ死にたくないよぉ…」

目に溜めた涙は溢れ、か細い声でフラグと思われる言葉を、はじめが俺の後ろで吐いた。


突然、魚人は銛を槍投げをするように持ち替え、俺たちを見回した。



魚人の目線は委員長の所で止まった。



「なん、、、で……」

魚人は左足を踏み込む。


「いや!やめて!!!!」


ビュンッ、 ザブッッ


「あ……あ、ガハッ、はーはっ」

バタン。

委員長は腹を突き抜かれその場で倒れた。


………




「きゃぁぁぁー!!」女子達が叫ぶ。



「にげろ!!」書記係の藤原一輝が叫ぶ。

生徒達は、一斉に前のドアから逃げ出そうとした。



正直、俺は今まで明晰夢を見ているものだと思っていた。が、多分違う。これは現実だ。


「待て!!」俺は無理やり心を抑えつけ考えた。皆は、魚人からはある程度距離を取っている。

「逃げても学校にはまだこいつみたいなのがおる」


「こんなんがまだおるんか」一星が俺の目見て聞いた。

「いるよ、、」はじめは腫れた目で一星を真っ直ぐ見てる。


「さっき、運動場におった」俺は正直に答えた。教室が今以上のパニック状態に陥ると思い、今まで言っていなかった。





ギィィ


「一輝!!!避けろ!!!!」新が叫ぶ。

一輝だけが魚人を背に向け、俺の話を聞いていた。


「え?」一輝は驚いた表情で固まった。魚人は一輝の後ろに立っている。一輝はそれに気付かなかった。俺も新が叫ぶまで気付かなかった。


グキッ、、

その瞬間、一輝の首があり得ない方向に曲がった。


「いっき!!!」晴矢が叫ぶ。一輝と晴矢は小中高と一緒だった。小中はあまり関わりがなかったらしいが、高校になって親友まで発展していた。




「もう、、無理」梨花は膝を床につけた。

「逃げても、ここに居ても、どうせ殺される……」梨花は続けて言った。


すると、

「あーーー、もう、クッッソがぁぁ!!!」

晴矢が突然叫び出した。


「急になんや」新が聞く。


「俺がこいつを殺したる」晴矢は半泣きで答えた。


「アホか!!やめとけ、死にたいんか!!」新は晴矢を怒鳴った。


俺もそう思ったので、

「ほんまやめとけ!!ほかになんかいい方法あるって」と、特に何も思いついていなかったが、晴矢を止めれるならとその場しのぎの言葉を発した。


「うるっさい!」


「こんままじっとして殺されるより、こいつ殺して生き残る方がええに決まってる!!」そう言葉を吐き捨て、椅子を両手で持ち、魚人の方へ向かっていった。

「アホ!!」俺は晴矢を止めようとタックルをしようとしたが晴矢の行動には迷いがなく、追いつかなかった。教室は「やめて!!」「やめろ!」と怒号につつまれていた。


晴矢は魚人の目の前まで行き、椅子を振り上げた。そして晴矢が振り上げた椅子は魚人の顔に当たった。


バンッッ


一瞬、魚人は怯んだ。が、本当に一瞬だった。魚人はすぐに崩れた体制を立て直し、晴矢を睨みつけた。


「晴矢!逃げろ!!!早く!!」俺は精一杯叫んだ。


魚人の右手が上がる。そして晴矢に向かって青く大きい拳が…


「離れろぉ!!」


「一星!!」


魚人の拳が晴矢の顔に当たる寸前、一星が魚人の頭を椅子で殴った。





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海ジン @Kouta08

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