1-4お姫様がボス部屋で待ち受けていて

時は夕飯前。


困難は逃げても追いかけてくる化け物だ。


何故俺が円谷さんを食事スペースに呼ばねばならんのだ。


優子さんから1年生組と円谷さんは歓迎される側なんだからとわざわざ俺の部屋まで来て焼肉の準備をするように言われ、食材以外の準備をさせられ、そして3人を呼んで来いと言われ、1階から大声で呼ぼうとしたらちゃんと部屋まで行って呼びなさいと言わんばかりにケツを蹴られ。


優子さんは人使いが荒いくせによくわからないところで厳しい。


いつもなら何にも言わないのに歓迎される人間に対してそれはないだろ、って。


なら亜夜を買い物に手伝わせるなよと言いたいところだがここに住んで三年目となれば優子さんのいい加減さも身に染みて思い知っている。



で、今現在2階の塁と3階の亜夜を呼び、最後の砦、302号室の"化け物"が居座るドアの前に立っていた。


ただコンコンとノックして「夕飯できたぞ」と言えばいいだけなのに足が竦む。


中には化け物がいるんだ、仕方ない。


まあ、俺が逃げなければ面倒な女の子くらいで済んだかもしれないが。


頑張って意を決したつもりになって拳を握りドアをノックしようとするが、振りかぶったところでまたビビッてしまった。


ボスが待ち受ける大きな扉を勇ましく開ける漫画の主人公たちって凄いんだなと思ってしまった。


そんなこんなでドアをノックすらできないでいたら俺の意に反してドアが開いてしまった。


強制的にボス戦に突入してしまった。ドアの前に立つだけで開くようなゲーム的な仕様だったのか。


「ねえ、いつまで待たせるの?」


怪訝そうな顔をした美しいボスからの会心の一撃である。


「いや…、ちょっと…、」


心の準備ができてないから目を逸らしながら言葉を探した。


「ホント面白くない人間ね。」


ため息交じりの一言を残し、あっさりとボスはボス部屋から出ていった。


もちろんHPは満タンのままで。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一人ぼっちとわがままプリンセスの青春群像笑劇 虹星憂鬱 @fhafha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ