第6話 茂み

 奴らはあの夜以降爆発的に増えた。

 いま目の前にいる奴らだ。


 ずっと眉間にシワを寄せ、猫背で、腰を落としたガニ股で、目をギョロギョロと右に左に動かしている。みな筋肉質でゴツゴツしており、ボロボロになった服をまだ着ている。


 一匹だけボロボロだけどネクタイをしている奴がいる。


 元はみな人だった。


 ふと、みな動きを止め振り返った。

 そこには青い奴がいた。


 青い奴は他の奴らと違ってゴツゴツしていない。腰を落としてもおらず背筋はピンと伸びている。


 「ガアウ、ガウ、ガウ」ネクタイの奴が言った。

 続けて「ガアウ、ガウ、ガウ」と言った。


 「ガウ」青い奴が言った。


 青い奴は両腕を大きく広げ「うぎゃあああああああああ」と吠えた。


 「ごおおおおおお」

 ほかの奴らはそれに続き腕を上げたり、手に持っていた棒で、地面をドンドンと叩いたりして吠えた。


 一番近い奴は1mくらい先、つまり目の前にいる。


 この茂みが無かったらもう生きてはいなかっただろう。

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