第2話 乖離
意識はハッキリしている。
今、まさに今、自分が何をしているのか分かっている。なんなら、どんな形相なのかまでハッキリ分かっている。
私は、なぜこんなことを続けているのか。
右の拳を振り上げては左の拳を叩きつけ、左の拳を振り上げては右の拳を叩きつけている。
初めはグチャッ、次にグシャッと鳴きだし、そのうちゴッゴッと。今はバキッバキッと鳴いている。
私は馬乗りになったまま彼女を見つめている。
ほんの少し前まで泣き散らし、暴れ、抵抗していた彼女は手足をダラリと投げ出して仰向けに横たわっている。
私は拳を叩きつけるのを止め、上体を起こし天を仰いだ。
「ふあああああ」
これまで息を止めていたかのように、大きく息を吐き出した。
――終わったか。
私は天を仰いだまま固まっている。
外で子供が駆けていく音が聞こえる。
――テクラは無事だろうか。
私はまた腕を振り上げ、彼女の顔があった所へ拳を叩きつける。
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