DISCO FLIGHT/凛として時雨 について

 出てきた当初は「変なバンド名」「曲名なんだかバンド名なんだかわからない」と散々言われた凛として時雨も、今となってはマトモな部類に感じられてしまいます。時代の流れは早いなぁ……。というか#4(アルバム名)の発売が2005年ってマジ?


 名前は相対的にマトモな気がしていますが、デビューから十年以上が経った今でも音楽性は相当異質なところがあります。初めて聴いたときに思うことはまず「うるさい」「声が変」「なに言ってるかわからない」「歌がへた」でしょう。大体あってる。少なくとも人を選ぶバンドであることは間違いありません。ただツボにはまると抜け出せなくなるような魅力があります。当時を知っている人なら時雨中毒という言葉に聞き覚えがあるかもしれませんね。

 特徴的なのはスリーピースバンドとは思えない激しく重い演奏、動静が数秒おきに切り替わるような目まぐるしい展開の曲、めっちゃ高い声のツインボーカルでしょう。特にボーカルのTK(男性)さんのハイトーンの声とシャウトは衝撃でした。


 演奏はもはや曲芸の域というか、ものすごい勢いで疾走したかと思えば急停止、また疾走かと思えば駆け足、止まると見せかけてロケットスタート、みたいなことを三人息ぴったりにやってのけます。意味不明な手数のドラム、メロディアスにうねりまくるベース、マジでなにやってるかよくわからないギター。楽器にも演奏にも知識のない私でもなんかヤベェなというのはよくわかりました。


 最近は女性みたいな声の男性ってありふれていますけど、その辺って女性らしい(こういう書き方はジェンダー的に微妙ですが)柔らかさとか繊細さという意味を指すことが多いです。対してTKさんの声は、鋭く張り上げる女性の激しい声って感じがします。ベースボーカルの345さんがまさに超通る声で張り上げて歌う女性なので、最初は二人の声の区別もつかないかもしれません。

 そしてこれも特徴的ですが、ツインボーカルなのにハモリをほとんどしない。最初のサビは男が歌って次は女、みたいな安易なパートチェンジもしない。畳みかけるような掛け合いが多いですね。

 他に多いのは、メインボーカルはTKさんで、めちゃくちゃ効果的なタイミングで345さんのボーカルが入るというか。長めの曲をほとんどTKさんが歌って、最後の最後で345さんが入って締める、みたいな曲もあります。

 バランスを取ろうとしていないというか。二人を平等に歌わせようなんて微塵も考えていない。でもそれはどちらかを軽んじているわけではないのが聞いていてわかります。


 タイトルに挙げた「DISCO FLIGHT」は(私の覚えている限りでは)凛として時雨が一気に有名になった頃の曲です。歌詞は語感に特化しているので内容を読み込むことはしませんが、とにかく勢いがすごい。これはアニソンあたりで凛として時雨を知った層にもぜひ聴いてほしい。これほど「聴けばわかる」としか言えない曲もない。


 まぁただ私は面倒くさいタイプの人間なので、凛として時雨については初期の方が好きだったと言います(初期の方がとは言いません。あくまで自分の好みです)。

 「JPOP Xfile」あたりから歌声にエフェクトかけるようになったのと、ウィスパーボイスを多用し始めたあたりから少し好みから外れてしまいました。ウィスパーボイス、クッソ嫌いなんで……。

 「凛として時雨? 腹から声出てない人ね」みたいな認識の方には、ぜひ初期の凛として時雨を聴いてほしい。私は未だにあの頃の時雨中毒を引きずっています。

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