第2話
死にたいだとか、今日もまた生きながらえてしまっただとか、そんなことを言っている僕だけれど、しかし、一年前までは実に幸せだった。それこそ、嫌なこともたくさん経験してきたつもりだったけれど、今の状況に比べれば雀の涙ほどの辛さもない。
酸いも甘いも味わってきたつもりだったけれど、甘い物しか口にしてこなかったんだ。
特に三年前から一年前にかけてはだだ甘だった。もし、その期間がなかったなら僕はまだこんなことにはならなかったはずである。もっとも、その期間がなければそもそもこんな状況になる理由も消滅してしまうのだが。
だからといって、僕はあの頃を唾棄すべきものとして記憶の奥隅に封印しよという気はさらさらない。むしろ、あれはこれ以上なく最高の、それこそ至高の宝としてずっと心の中で保管しておくべきものだと考えている。
あの頃、僕はまだ二一歳だった。そして、彼女もまだ二二歳だった。
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