情けは人の為ならず

湯浅さんに連れられた僕は

重々しいオーラを放っている襖の前に立っている。


とても広いであろうお屋敷の奥の奥に

その部屋はひっそりとあった。


少し暗くてひんやりとした感じがするが、

それがまたその部屋をより一層重々しく感じさせる一つの要因だろう。


「こちらには吉継様がいらっしゃいます。」


湯浅さんは僕の顔色をチラリと見た。


「病みあがりではありますが、その...」


僕の体調を気遣っているのだろう。

整った顔がすまなそうに僕を見る。


「大丈夫です。

おかげさまでだいぶ良くなりましたから。」


少し、ほんの少しだけだが、

湯浅さんの顔が和らいだ気がする。


「しかし無理をしてはいけませんよ。

何かありましたらすぐに言ってくださいね。」


あぁ、本当に、湯浅さんは...


「ありがとうございます。」


本当に湯浅さんは優しい。




「情けは人の為ならず」

…人に親切にすれば、巡り巡ってやがてはよい報いとなって自分に戻ってくるということ。

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