親しき仲にも礼儀あり

無事に委員会の仕事を終え、

部活もやりきった。


弓道は身体的なダメージよりも

精神的にダメージがくる。

常に一本一本に集中することで、

神経をすり減らしているのだ。

一立(四射で一立)引き終わった後の

脱力感といったら...


「疲れたなぁ。」


ぽつりとこぼれた心の声に少し驚きながらも

自分の周りには誰もいないことを知り、

ほっと心を撫でおろす。

帰りはいつと一人だ。

涼太の家は学校から離れたところにあり、

電車で通っているので帰りは別々である。


涼太はなぜか家から離れた高校を選んだ。

本当なら歩いて通える学校なんて

たくさんあったのに。

でも、涼太は僕と同じ学校を選んだ。

なんでも

「蒼依と同じ学校に行きたかったから。」

らしい。

可愛いというか、おかしいというか。

涼太の考えることは時々わからない。


もともと僕の家と涼太の家は近かった。

小学生の頃は

何度もお互いの家を行き来していた。

しかし、じいちゃんの死をきっかけに

引っ越したことによって

僕と涼太は一緒に遊ぶことが

安易なことではなくなってしまったのだ。

それからかもしれない。

涼太が今まで以上に

僕と行動を共にするようになったのは。




「親しき仲にも礼儀あり」

…親しい間柄であっても相手に礼儀を重んじるべきであるということ。

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