夏の日、キミを追いかけた

◇夏の日、きみを追いかけた

(秋永真琴さん)

 転校する同級生を追いかける途中で異世界転生してしまう女の子のお話。

 講評するに当たり、基本的には「出された作品のみ」で評価するように心がけているのですが、有名なお名前で提出されると中々それも難しく、僕の講評においてはそれが不利に働いていると差し引いて受け取ってください。

 さて、一通り読んでみて、率直な感想を言ってしまうと「なんか腹立つ」と言った印象です。

 他の言葉でも、感情でもなく「なんか腹立つ」が僕の胸の内をジャストサイズに表しています。

 そうなった原因は色々あると思うのですが「君たちは異世界ものを書くのに必死に鍛錬を積んだ筋力が必要だろうが、私は同じことを体重移動だけでできる……余分な筋肉など速さの邪魔になるだけだ」とでも言い出しそうな謎の強キャラ感がその主たる原因だと思います。その余裕ムーブみたいなもので一度「なんか腹立つ」スイッチが入ると、イケメン三人組も女魔王も腹立つし、最後に過去作のスピンオフ的にまとめる感じも腹立つし、ちょいちょい出てくる「チトセライナー」にフフッとなる自分にも腹が立ちます。

 ですがこなれた文体と過不足ない地の文の掘り下げ方は文字通り流石の強キャラで、かなりのボリュームの出来事を詰め込んだプロットなのに窮屈感が全然なく、またギャグもきちんと笑える仕上がりで独り善がりに終わっておらず、ちゃんと面白かったです。なんか腹立つけど。

 次回は、良かったらお名前を伏せて、別のペンネームで参加して頂けたら「こいつ……何者だ⁉︎」と有利に働くかも知れません。チトセライナーの連呼は良かったです。

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