オーバー・ザ・レインボウ

◇オーバー・ザ・レインボウ

(ピョンコスキー・クニマソフさん)

 エヴァとアルジェントソーマを足して神姫絶唱シンフォギアを振りかけて五で割った感じのオマージュ的作品。

 まず、我々素人物書きが読むとまず最初に来るのが「分かる……! こういうのやりたくなるよね……!」という共感と、伝わってくるのはあなたのそれぞれの作品が大好きだという愛です。僕は昔「トップをねらえ!」のオマージュみたいなのを書きました。あなたから作品への愛。それが存分に伝わった時点で、もうこのお話については講評が必要ない気もするのですが、念の為続けます。

 こういったオマージュが目の前に置かれた時、我々講評者の脳裏に浮かぶのはこの作風を尖らせるべきなのか、一般化するべきなのか、という疑問です。尖らせてもそれは精度の向上した他人の作品だし、一般化すると、あっという間にその魅力がくすんでしまうと分かっているからです。

 尖らせましょう。本当は自分の道を見つけて欲しいところですがあなたの場合この方向性で突き抜けた方が長い目で見ていい結果になる気がします。ただ、マルパクはやめましょう。マルパクしてない、と仰るかもしれませんが、この水準だとパクリと言われても反論できないレベルです。せめてブレードが高周波でなかったら……。ある作品にラブがスパークした時、自分が好き、となった中心にあるもの──それがメカなのか、謎が謎を呼ぶシナリオなのか、魅力的な人物造形なのか人によりますが──そのエッセンス、その骨髄をパクるのです。いや、パクるのは良くないんですが。

 そうしてパクった骨髄に、自分のオリジナルの、自分ならでは、自分だけのものを肉付けし、時代や技術に合わせてアップグレードし、可愛い女の子を足す。するとどうでしょう。読み返して満足すること間違いなしの、読後感がエヴァのエヴァじゃない作品ができるのです。

 それと気を付けたいのは「設定は物語ではない」という大前提です。

 我々は良い設定を思い付くと、まるで良い物語を思い付いたかのように、そのことばかり考えてしまいがちですが、実は反対で、良い設定は同じくらい良い物語がないと釣り合わなくなる物語のライバルです。

 設定は料亭の皿、物語はその料理で、時に皿をばりばり食べるような方もいますが、大抵の読者は料理、物語を期待してページをめくります。あなたの作品には根源的破滅招来体……じゃなかった生態系終末機構代行体のような独創的なアイデアの設定も見受けましたので、人物とその関係性の掘り下げをもう少し深くすると、より魅力的なお話にしやすいように感じます。

 大賞候補作として講評するなら、字数に対してプロットが大き過ぎ、予告編かダイジェストみたいになっているのはやはりマイナス査定ですし、主語飛ばしや読み方の分からない固有名詞の頻出など文章自体にストレスを感じる要素も散見されます。

 でも、そんなの関係ないもんね?

 好きなんだもんね?

 ならとりあえずこれでいいんだよ。

 だって好きなんだから!!!

 次回、似たようなことがあるなら、アニメ一話分に話を絞り、固有名詞にはフリガナ機能を利用し、読者の立場になって「音読」(声に出して読む)してみて、コンパクトで、読みやすくて、多くの人に届きやすいお話を書いてみてください。

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