手紙

◇手紙

(常盤しのぶさん)

 美しい髪を持つ同性の同級生に惹かれる女性徒のお話。

 読んだ印象として、あなたの中に書きたい世界がしっかりあって、それを上手に文章に写し取れていると感じます。

 それだけに、主人公と「彼女」が、二人とも「作者であるあなた」だと感じられます。

 我々書き手は、我々書き手の脳みそ一つで複数の登場人物を書くわけですが、ともすると「全員のテンションが一緒」「全員の価値観が一緒(もしくはとても近い)」「全員の話す言葉が一緒」のようになりがちです。

 これを防ぐ為には、小説には書かなくてもいいので、「その人物の生育背景」をある程度シミュレーションして、そのキャラクターの個性を決めておくのが有効です。

 主人公は主人公の脳……その背景から滲む行動や言葉を選び、「彼女」は彼女の個性から湧き出す言葉を語り、行動する。

 それが表現できると、劇中人物の生命がより生々しく感じられて、演じるドラマが鮮やかに、その死が鮮明になると思います。

 簡単なのは、身近な印象的人物をモデルにすることですが、中々小説映えする民間人には巡り合わないかも知れないので、普段からちょっとした価値観の差を感じる言葉や行動を観察して覚えておくのが近道かも知れません。

「ドアをばん! と閉める↔︎丁寧に閉める」「お金のことは1円単位できちんとする↔︎どんぶり勘定」「何度も聞き返して返事を確認する↔︎言いっ放しでこちらの返事はあまり聞いてない」など、他の人と接していてその人と自分の「普通」「当たり前」に小さな差を感じたことはありませんか? そのちょっとした違和感、価値観の差を態度や行動で示すエピソードを覚えておいて、劇中人物の性格設定に合わせてさりげなく組み込むと、例えばですが「彼女は几帳面な性格で」なんて無粋な説明文を入れなくても「はい。この間借りた213円ね」とやるだけで、自然に「あ、この子きちんとした子だな」と読者に感じて貰うことができ、登場人物に色が付きます。「え、いいよ、200円で」と返せば、この二人の個性や関係性がなんとなく見えて来ませんか?

 僕はこういうのが苦手で、最初から性別や年齢や方言で差を付けたりしていますが、次回作では良かったら試してみてください。

 個人的には、ラストは自殺なのか他殺なのかだけでも分かる形にしてほしかったです。

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