第28話 知らされぬ打開策
「なんでだ!」
野戦基地に怒号が響いた!
「仕方ないことだ、もう決定した」
「全員死ぬ気で戦ってきたのにそれはないだろ!」
浜崎を野戦病院に運んだ後、基地内に避難命令が出たため司令官の元に乗り込んだ。
どうやら日没までに殲滅させられなければ航空攻撃にて全滅を図るらしい。それであの範囲に閉じ込めておくためには現在戦ってる部隊が犠牲になるしかないようだ。
「だがこうでもしなければ都市は戻らない」
「っ……クソッ!」
なぜあれだけ戦って生き延びた人間が死ななければならない。しかしそうでもしなければ殲滅できないほどの数なのも事実。怒りに身を任せ近くにあった箱を蹴飛ばした。
だが文紀やその友人たちが死ぬのはどうしても許せない。彼らはまだ高校生だ。死ぬには早すぎる。
「わかった……」
そう呟いて司令部を出た。日没まで時間がない。
「文紀、聞こえるか?」
無線から佐々木さんの声が聞こえる。
「どうかしましたか」
近くにいた奴からナイフ抜くとすぐに返答した。
「今すぐそこから後退しろ、出来れば秋奈や美香、カズに田中にも伝えろ。もし無理ならせめてお前だけでも」
「なんで……」
「いいから全力で後退しろ! 日没までに!」
自分が言い切る前に怒鳴り声が耳を劈く。
「わ、わかりました」
「どうかしたのかな?」
「わからない、とりあえずカズ達にも」
そして前線の方を見たが人と奴らが多過ぎて見分けがつかない。しかし日は落ちる寸前。
「仕方ない、秋奈と俺だけでも戻ろう」
状況が理解できないまま前線とは逆向きに全力疾走した。そして日が完全に落ち、空には一番星が輝いた。
違う、あれは星じゃない。
気付いた時にはさらに轟音が響き渡っていた。飛行機だ。しかし何故、航空支援の予定なんて……。
「文紀伏せて!」
秋奈に突き飛ばされビルの陰に入ると爆音が響く。それに続いてコンクリートの破片が飛んできた。
「何が始まったんだ!」
叫びながら顔を出すと空からパラシュートが何個も落ちてくる。
爆弾だ。
秋奈を庇うように覆い被さると、爆発音と死の恐怖に怯え続けた。今俺たちは「人間」によって殺されようとしていたんだ。
それから暫くしてようやく爆音が止み、航空機はどこかへ飛んで行った。
「終わったか……」
秋奈を引き起こしてビルの陰から降りると、そこはまるでさっきとは違う、別世界のようだった。そこに生きたものの姿は一つもない。あるのは瓦礫だけだ。全員、死んだんだ。
それからずっと歩き続け野戦基地に歩いた。佐々木さんの姿が見えると秋奈の横で膝から崩れ落ち、泣き叫んだ。どうしてあんなことになったんだと。その間、秋奈はずっと遠くの空を眺めてるように動かなかった。
こうして、この騒動は収束へと向かった。
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