第26話 真紅

 午後五時半。先行部隊により都市中心部に追いやることに成功した。そしてこれよりこの国の総力での最終決戦に臨む。全ては一人の人間として、人類存続をかけた戦いだ。ここで負ければ滅ぶ。


「浜崎はここで降りて援護を頼む」


 佐々木さんが無線機を渡し、それを受け取ってドアを開けた。


「ああ、任せとけ」


 親指を立てグッドサインを掲げるとそのまま近くのビルに走っていく背中を見送る。後部座席から佐々木さんの不安気な顔を覗いた。


「何かあるんですか」


「いや、ただ……何か嫌な予感がするんだ」


「縁起でもない、きっと大丈夫ですよ、俺たちも行きましょう」


 少し進んだところで車から降りると丁度迫撃砲が発射され着弾音が響く。それからボディを叩いて合図した。


「田中! 支援は頼んだぞ! 間違っても俺たちには当たるなよ!」


「わかってるよ、早く行ってこい!」


 その声と同時に突撃合図の笛が鳴り響いた。それから街中に響く大声と共に多数の人間が群れとなって奴らの群れに飛び込む。そしてあたりは一瞬にして真紅に染まった。ハンマーで潰される肉片に脳天を貫く銃剣。

 途端に人と奴らが入り混じった混戦へと発展する。弓を引きすぐに放つ。周りに誰がいるかは分からないが目の前にいる奴らを倒さなければ減らないだろう。


「秋奈、後ろは頼んだぞ」


「わかってる」


 すぐに矢を引き抜くとまた矢を引く。倒せど倒せど矢はどんどんなくなっていく一方で奴らは減る気配を見せない。

 そして弓を構え、引いた直後に横から掴み掛かられる矢は的外れな方は飛んでいき自分は押し倒された。死んだかと思ったが遠くで何かが光った。次の瞬間には空気を裂いて脳漿をぶちまけた。


「ありがとう浜崎さん」


「いいから早く立って戦え」


 弓は落としてしまい一気に奴らの群れに見えなくなった。瞬時に腰から拳銃を取り出し目の前に向け頭に狙いをつける。そして引き金を絞った。

 気がつくと周りには自分たちしか人間はいない。あまりの多さに一時撤退したようだ。


「クソッ、俺たちも一旦退くか?」


「任せるわ」


 そう言う秋奈の背後から逃げ道を作るためグリップを握りなおし連射する。そこに秋奈が飛び込みさらに道を切り開く。遠くに見える赤いトラックの下まで行けば田中からの支援があるはずだ。

 一瞬、道が開ける。


「秋奈走れ!」


 合図と共に押しのけてトラックのボンネットに飛び乗ると続いて何体も手を伸ばしてくる。

 すると真横で破裂音がした。

 佐々木さんがフロントガラスを撃ち破ったようだ。

それに合わせて上から薬莢が大量に転がりバタバタと倒れていく。


「まだ撤退は早えぞ! フゥー!」


 ハイになってる田中の後ろに回り込み秋奈に拳銃を渡した。


「もし奴らがここに登って来ようとしたら頼むぞ」


 それから機関銃の弾倉を手に取り待機した。


「次だ!」


 田中の合図に合わせすぐに装填して撃ち続ける。前線はこの車両のほぼ真横まで下がっていた。


「ダメだ! 一旦下がれ!」


 車内から荷台に佐々木さんが飛び出してきた。そして猟銃で車内に散弾を打ち込む。どうやらあまりの多さにフロントガラスから侵入したようだ。そしてその車内ではオーディオが大音量で鳴り響いている。


「早く前線を下げろ!」


 必死の叫び声に気づき殆どが下がり始めた。機銃と弾倉を抱え荷台から飛び降りて三人で逃げ出したあと佐々木さんが車内に自衛隊から持ち出した手榴弾を投げ込み、こちらに走り出した。


「伏せろぉ!」


 自分たちに覆い被さるように飛び込むと、背後で火球が見えた。それに続き爆風と衝撃波が遅い周囲にいた奴らを焼き尽くす。

 そのまま地面に叩きつけられ見えた風景は真っ赤に染まる夕暮れと、道を覆い尽くす血液にトラックを覆う炎だけだった。

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