第25話 人類の反撃

 あれから一ヶ月ほどが経った。それぞれの地区は各個撃破により人類による奪還が進み遂に都市部の殲滅に出ることにした。

 自分たち七人はトラックで戦地を転々とし都市殲滅戦にも参加することになった。戦闘方法も確立し、田中がトラックに設置した機関銃で掃射した後に佐々木さんと浜崎さんが前線を進めて、カズと美香、自分と秋奈の四人二組で接近戦を行い建物内部を制圧するという方法で効率的に倒せるようになった。


「着いたぞ、みんな降りろ」


 佐々木さんの声で目が覚めた。すぐに荷物を背負って後部座席から降りて空を見上げる。これから百何十万という奴らを倒すとは思えないほど綺麗な暁だ。

 都市郊外の野戦基地。自衛隊から警察、消防などの公的機関の部隊から、様々な職業の民間人たちによって形成された部隊。又はその混合部隊が忙しく動き始めていた。

 ブレザーを羽織り、革手を履いて、荷物を肩から掛け、リカーブボウを手に持つ。ほかの地方都市でも同じく作戦が今日実行だ。これが成功すれば俺たちの故郷は人間の手に戻る。一度は寄生虫の宿主達に覆われたが、今が反撃の時。戦える者全てが武器を取り、奴らを死滅させる。


 さあ、作戦時刻だ。


 今回の作戦は大通りからは機甲部隊が突破し、都市中心部では自衛隊と警察の特殊部隊が制圧した後に総突撃により中心部での壊滅させるという、大まかな計画はこのようなものだ。

 多数の戦車や兵員輸送車、装甲車などが武器を満載にして動き出し、指定された地点に向かう。

 自分たちは総突撃前の支援を行い、突撃に参加するはずだった。しかし作戦開始から数時間後、救難信号が出た。そして現在いる部隊で重火器を積んだ車両はこのトラックだけ。すぐに全員で飛び乗ると救難信号が出た地点に向かった。


 その地点付近に着くと奴らの数も増えてきた。状況は航空支援部隊のヘリコプターがローターを損傷し不時着してる模様。


「佐々木、あれじゃないか?」


 助手席から浜崎さんの視線の先には斜めになりアスファルトにめり込んでいる機体の姿があった。

 すぐに車から降りてヘリの中を覗くとコックピット内に二人と後ろに三人が並んでいる。殆どの乗員は無事なようだが、コックピットの右側のパイロットが足を抑え苦しんでいる。


「大丈夫ですか!」


「右足が……右足が……!」


 パイロットは繰り返しそう呟く。足元を覗き込むと不時着した衝撃で、正面が潰れて足が押しつぶされているようだ。


「カズ、なにかこじ開けるのに使えそうな工具はあるか?」


「バールくらいしかないな」


「仕方ない」


 隙間に先を突っ込み一気に力を入れた。少しでも開けば足が抜けるかもしれない。しかしそんな期待とは裏腹に期待が軋むだけでほんの少しも動かなかった。こうやってるうちにも周りに奴らは増えていく。


「文紀! 早くしろ!」


 田中が機銃の薬室に弾を装填して言い放った。撃てば奴らがよってくるが撃たなければもうすぐ囲まれてしまう。全員が銃を構え今すぐにでも助け出さねばならない。


「足が挟まれてるんだ!」


「置いてでも行かなきゃ俺たちも死ぬぞ!」


 カズが焦燥の混じった声で叫ぶと浜崎さんが反論を加えた。


「ダメだ! 仲間は置いていけない!」


 ほかの隊員から見兼ねたように怒号が飛ぶ。


「文紀!カズ!邪魔よ!」


 荷台から飛び降りて美香が近づいてきた。


「おい何をする!」


「邪魔よ!」


 止めようとした隊員を突き飛ばしてコックピットに身をねじ込んだ。そして腰から斧を掴み取り思いっきり振りかぶった。


「もう時間がないぞ!」


「なら早く撃てばいいじゃない! こんだけ足が潰れてれば引っ張り出したところで戻らない! なら私が叩き斬ってやるわ!」


 浜崎さんに言い返すと斧を一気に振り下ろすと同時に全員が銃撃を始める。重なり合う発砲音にパイロットの断末魔が掻き消された。

 すぐにカズと引っ張り出して地面に寝かせる。どうやらショックで気を失ってるようだ。美香がカズからネクタイを奪って足の付け根を目一杯締め付け、そのまま後部座席に乗せた。


「みんな、早く乗ってくれ」


 佐々木さんが運転席の窓からそう言うと近づく奴らを倒しながら荷台に飛び乗って野戦基地まで戻った。

 後部座席では美香と隊員で応急処置が行われている。


「重傷者がいる! 誰か手を貸してくれ!」


 隊員がパイロットを担ぎそのまま運んでいった。

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