第21話 我が町の復活

 大通りは大方除雪車ことミンチ製造機により掃討し、他の路地も除雪機の活躍によって肉片の山になった。そして自分たちもさっきの通路に戻り二人と合流した。


「おい、田中はどうした」


「それは後で説明する、こっち側も終わらせよう」


 さっき田中が噛まれた場所にはケーブルがたるみ、滑車も吹き飛び、リムが激しく歪んだコンパウンドボウが落ちていた。革手を脱いでそっと手に取る。


「ここまで守ってくれたありがとうな」


 周りには聞こえないくらいの小ささで呟いた。奴を吹き飛ばした衝撃でパーツが吹き飛んだだけでなく全体が歪んでしまっている。もう直せないだろう。どうしようもないザマだ。

 路地の先にはまだ奴らが残ってる。地面に置いて予備で持ってきた和弓を取り出し弦を張った。

 全員と目を合わせると小さく頷く。そしてまた路地を向いてカズはボウガンを構え自分は弓を引いた。そして二本の矢が放たれる。それに続き美香と秋奈が走り出す。


「美香危ない!」


 カズが美香の横にいた奴に体当たりをして馬乗りになった後、後頭部を地面に叩きつけた。


「ありがとうカズ、後ろは頼んだわ」


 死体の頭から斧を抜きながらカズの後ろに回る。


「ああ、任せとけ」


 カズも矢を装填し構えた。

 後もう少しでこの町の奴らも撃滅させることが出来る。


「秋奈、俺たちも頑張らなきゃな」


「うん、そうだね」


 血がネットリと付いたシャベルのグリップを握り直し前に構えると下から顎に向け突き上げる。

 それから一時間弱、路地には首を斧で切り落とされた死体と頭蓋骨を叩き割られ飛び出た脳みそ、そして眉間に穴が空いた頭だけが転がっていた。


「総員集結!」


 大通りからスピーカーで呼ぶ声が聞こえた。すぐに全員で走って戻ると他の部隊も既に集まって居た。


「これより自衛隊員と志願者による最終突撃を開始する」


 勿論殆どが志願をした。そして隊員達は小銃に銃剣を取り付け、全員近接武器を構えた。佐々木さんや浜崎さん、吉田の爺さん達も猟用の大型の刃物を取り出した。まるで抜刀隊だ。


「攻撃開始ぃ!」


 掛け声と共に銃剣突撃が開始される。それに続いて奴らの群れに向け走り出す。その辺に落ちて居た木片や工具、挙げ句の果てにはコンクリートブロックすらも武器にして全員死ぬ気で戦った。

 肉が引き裂かれる音。鈍器が骨を砕く音。

 銃剣やナイフで脳を貫き、ナイフが使えなくなれば石で殴り、それも無くなれば素手で地面に叩きつける。

 生き残るために戦う人々には、既に日常の面影など一ミリたりとも残ってはいなかった。

 そして最後に残っていたのは、真っ赤な町に返り血を浴び佇む人々だった。

 この町は遂に人類の手に戻ったのだ。

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