第18話 駐屯地

 町を抜け、再び山道を走っていた。隣で寝ていた秋奈が目を覚ます。


「あれ、ここは」


「ついさっき町を抜けた、多分三十分もすれば着くよ」


 秋奈は眠そうな目を擦りながら窓の方を向いた。数日前から給電が断たれたため街灯は点かず、ヘッドライトだけが頼りだ。

 席の後ろの方に乗っていた老人たちは1度目を覚ましたものの再び猟銃を握り眠りに落ちた。


 あの日、全員大切なものを失った。それでもみんな武器を取って戦い、生きることに必死でしがみついてきた。毎日ロクに眠れない夜を過ごしてきたんだ、疲れるのも無理はないだろう。全員交代で警戒を続け、何か侵入しそうになれば音を出さないように殺し、バリケードを補強する。それに化け物になったとはいえ元は人間だ、いくら割り切ったところで精神的には辛い。

 俺たち五人は元々戦った経験なんてないし、あの女の子だってきっとショックで喋れなくなったのだろう。


 しばらくして車が停車した。それから浜崎が除雪車を降りるのを見て佐々木さんと二人で車から降りる。


「秋奈はここでみんなを頼む、佐々木さんと見てくるから」


 そう言ってホームセンターで暴徒たちから奪った警官の拳銃を握った。シリンダーを開くと残りの弾は四発。

 除雪車の横を周り、ヘッドライトが照らす先を見るとバリケードが張ってあった。恐らく自衛隊なものだろうか。

 左右は何も見えないためライトで照らす。が何かの建物があるだけで特に何も無い。


「手を挙げろ」


 強烈な殺意と共に山から声が聞こえた。すぐに周りに至る所をライトで照らし、銃を構えた。


「こちら、北部方面臨時編成連隊、敵意が無いならすぐに武器を捨て手を上げろ」


 その声ですぐに武器を捨てる。すると闇の中から数人の迷彩服を着て小銃を構えた男が出てきた。


「生存者か、何処から来た」


「山を越えたところにある町から逃げてきたんだ、ラジオでここの駐屯地が生きてるって聞いて」


「わかった、すぐに通す、バリケードを開けてくれ」


 佐々木さんがここまで来た経緯を説明するとすぐにバリケードが避けられる。


「少し行くと曲がり角があるのでそこを開けば駐屯地に入れます、ここまでお疲れ様でした」


 隊長らしき人の横にいた若い男がバリケードを避けると丁寧に道を説明してくれた。すぐに車に戻り駐屯地内の駐車場に停まった。

 周りには所々一般車両が停まっている。ここまで逃げてきた生存者だろうか。

 後から話を聞いた話だとここの駐屯地に残るのは陸上自衛隊の第七師団臨時編成第二普通科連隊。だそうだ、初め聞いてもよくわからなかったが、あの騒動で半分近くの部隊を失い、さらに別に派遣されここに撤退した部隊と合わせ再編成された部隊らしい。


 そして朝が来た。ゆっくり休めたとは言い難いが希望の朝だ。

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