第16話 突破

 カズが手渡された矢を装填するのに合わせて自分も弓を構える。


「おい、文紀どうする? かなり囲まれてるぞ」


 カズがライトで森の奥を照らす。まだ二、三体なら対処できるが流石に今の状況で、より強固に囲まれてしまえば食われるだけだ。よく考えろ。


「俺にいい案がある」


 脳をフル回転させる中、冷静な声で田中喋り始めた。


「カズと文紀は前の奴らを弓とボウガンで倒しながら出来るだけ早く進んでくれ、俺たち三人は矢を回収しながら横から来た奴らに応戦しながら付いていく」


 田中の案はつまり正面突破だ。あまりにも単純でいい案とは思えない。


「大丈夫だ、俺を信用しろ」


 でも今は何も案を出せるわけでも無いし、考えてる暇もない。それに彼は傷だらけで奴らを避けながら逃げてきた、信用するしかない。


「わかった、カズ行こう」


 そう言って五人で前へ向け走り出した。既に何体かが前に居たため二人で何本か弓を放ち、倒れた奴らの隙を駆け抜ける。

 道が曲がりくねってるため角で奴らが出てきた。すぐ近くだったため体当たりで押し倒して、ナイフを取り出し脳に向け突き刺す。


「文紀大丈夫か!」


 少し遅れた俺に田中は足を止め声をかけた。


「足を止めるな!」


 少しでも止めれば囲まれる。それに後ろを向くとゾロゾロと両端の草むらから出てくる。すぐに立ち上がり田中の背中を追う。横から奴らが出てこようとするたび田中が鉄パイプで草むらに押し戻す。

 息はとうに上がり足も限界だったがひたすら走り続けると次第に奴らが少なくなっていき、それでも走り続けるとようやく建物が見えた。


「大丈夫だったか!」


 佐々木さんがこっちを見るたび走り出した。


「ええ、田中のおかげでなんとか」


 田中は照れ臭そうに、そんなことありませんよ。と放送局の中へと入っていった。


「何はともあれ全員無事でよかった」


 安堵を見せた後、そのまま話を続ける。


「後それといいニュースがある。後五分で政府からの放送があるからそれを聞こう」


 そのまま全員放送局の中へと連れてかれた。そしてスピーカーの前に座る。少し静寂が流れ、それから男の声が流れた。


「こちら臨時政府、全国民へ向けた放送です」

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