第11話 政府発表

 なんとか波を乗り越えた。しかし、三日目にも関わらずテレビは何も入らないし、自衛隊や政府が動いてる兆候は見られなかった。

 そして迎えた四日目の正午、ラジオにノイズ混じりの音声が流れた。


「……ちらは、臨時政府で……」


 たしかに「臨時政府」という言葉が聞こえた。電波のいいところに持って行き続きを聴く。


「政府は壊滅状態。残った一部の関係者のみで臨時政府を結成しました」


 ノイズが少なくなったスピーカーから聞こえたのはアナウンサーの様なはっきりとした口調ではなく、緊張している若い男の声だった。


「本部は警視庁本部庁舎。全国各地の警察、消防、自衛隊に連絡を取っております。この騒動の原因は不明。今後は一時間毎に放送されます」


 少し間が空いた時、息の音をマイクが拾った。


「国民の皆さん、この事態は必ず収束させます。例えどんな手段を使ってでも、だから生きてください。臨時政府がお伝えしました」


 全てが終わると思っていた、どれだけ頑張って生きようとも音沙汰無い現状に絶望していた。けれど、この放送で一筋の光が見えた。


 たしかに放送で政府は壊滅状態と言った。でも臨時政府が存在し、ラジオで放送できる状況にある。そして壊滅した今でも状況を打開しようとしている人達がいる。


 気づくと目からは涙が溢れ、頰を流れていた。

 生きてやるんだ。


 放送が終わるとすぐに立ち上がってみんなにこれを伝えに行った。



 一時間後、見張りの合間にラジオに耳を傾けた。


「こちらは、臨時政府です。現在各地域との連絡を図っております。それと同時に機能している機関を駆使して生存者の確認を行なっております。もしこれを聞いている人は目立つ様に白い布などを掲げてください」


 ラジオを抱えて、落ちていた大きなゴミ袋を手に取ると屋根に上がってアンテナに括り付けた。日差しが強い中、空を見上げると何が光る。


「ヘリだ」


 グリーンに塗装された自衛隊のヘリ。必死に両手を振ってアピールをした。自分ら以外に生きている人間がいる。それがただ嬉しかった。ラジオからさらに音が流れる。


「この状況で自分を守れるのは自分だけです。しかし、貴方が人間なら、手を取り合ってください。それが残された生きる道です」




「一人でも多く、生き延びてください」

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